景気刺激策、拙速な撤回に警戒感 よみがえる過去の失敗
ブルーベイ・アセット・マネジメントの首席投資ストラテジスト、デービッド・ライリー氏は、財政刺激策を早く撤回し過ぎ、中銀に景気浮揚の重荷を担わせたことが金融危機後の失敗だったと指摘する。
ライリー氏は、中銀が今、極めて大規模な金融緩和の縮小を検討し始めたこと自体は正しいと認める。「私が最も懸念するのは、それ(中銀の緩和縮小)が合図となり、政府が金融政策の後ろ盾がなくなったと考え、だから財政支援策をもっと提供することほもうできないとの思考になることだ。つまり、政府が債券自警団の心配をし始めることが心配だ」と述べた。
債券自警団とは、政府の放漫財政を警戒した債券投資家が国債の利回り、つまり政府の借り入れコストを押し上げて政府の浪費を罰する現象だ。ライリー氏は緊縮策に拙速に後戻りすることの危険性を主張する。
バイデン米政権が米議会上院の超党派議員と最近合意したインフラ投資法案では、新規支出額が5590億ドルと、市場で予想されていたより小規模になった。さらなる景気刺激の法案は共和党の強い反対で抑制される可能性が高い。
ドイツは9月の総選挙が鍵に
ドイツでは9月の総選挙が鍵になるかもしれない。支持率でリードしている与党キリスト教民主党(CDU)は財政規律を公約に掲げる。
ただしエコノミストは、ドイツが近い将来に財政収支を均衡させることは無理とみている。
モルガン・スタンレーの欧州経済責任者、ジェイコブ・ネル氏によると、CDUの政策綱領がうたうのは、ラガルドECB総裁がまさに警告した、拙速な財政刺激引き揚げにほかならない。「総選挙後の連立協議では財政規律提案は撤回されるとは思うが、それでも財政健全化路線にドイツが急速に戻るリスクは実際にある」と警戒する。
一方でアナリストたちは、全体的には各国・地域政府の行動から財政刺激策の継続への決意を読み取っている。欧州連合(EU)は昨年に続き、今年も財政ルールを棚上げする。BofAの推計では、米政府は今年も1時間当たり8億7900万ドル規模の財政支出をする見通しだ。
チューリヒのミラー氏は「政策立案者らは、前の失敗から学んでいる」と語った。
(Dhara Ranasinghe記者 Sujata Rao記者)
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