最新記事

東南アジア

タイ、自動車輸出急増で過去最高額へ コロナ禍で打撃の観光業を補完

2021年7月2日(金)17時17分
バンコク東部の自動車工場

タイの自動車輸出額が今年、過去最高を記録する勢いだ。写真はバンコク東部の自動車工場で2012年11月撮影(2021年 ロイター/Chaiwat Subprasom)

タイの自動車輸出額が今年、過去最高を記録する勢いだ。コロナ禍で停滞した世界の経済活動が再開に向かっているためで、主力産業の観光業が外国客の落ち込みで苦闘するタイにとって、救世主になっている。

タイはアジア第2の観光大国。しかし、同国の有名な海岸や露天市や仏塔は世界各地の観光業の例にもれず、コロナ感染対策の規制でこの1年、干上がった状態だ。

タイ中央銀行は既に、今年の経済成長率予測を個人消費と観光業の点から下方修正している。ところが先週には来年の輸出見通しを引き上げ、11年ぶりの高い伸びとなる17.1%とした。3月時点では10%と見込んでいた。

通関統計によると、輸出の伸びの大半は自動車とその部品や付属品。この分野の輸出額は5月、前年同月比170%と8年超ぶりの急増となった。タイでは最大の輸出部門だ。

ジュリン商務相は今月、記者団に「輸出は今や、我が国の経済の主力エンジンだ」と語り、一方で観光業がなお立ち直れていないことも認めた。

タイの自動車の組み立てと輸出の拠点は世界最大の自動車メーカーにとってはアジア4位の規模。進出しているのはトヨタ自動車やホンダといった大手だ。同国の国内総生産(GDP)で自動車産業は約10%を占め、製造業雇用では10%を創出。コロナ禍の影響はあったものの、観光業に比べ、ずばぬけた速さで立ち直ることができてきた。

同国のAAPICOハイテックは4500人を雇用する自動車部品メーカー。Yeap Swee Chuan社長はロイターに、今は24時間態勢でフル稼働していると語った。コロナ禍の打撃を受けた昨年とは大違いで、「昨年は絶不調だったが、今年は雲が晴れたのは間違いない」と指摘。今年の売上高の伸び目標は20%、利益目標はこれを上回る伸び率としている。「タイの(コロナなどの)状況が何であれ、今はまだ経済全体にそれほど影響していない。輸出市場が好調だからだ」と指摘した。

輸出が引っ張る自動車好況

タイには今年4月以降、同国最大のコロナ流行感染が到来し、国内の経済活動は抑制された。ところが国内の自動車販売への影響が限定的だったばかりか、海外からの需要がけん引役となって自動車産業は好況に沸いている。

タイ工業連盟(FTI)によると、今年の完成車の輸出台数は80万-85万台に達する可能性がある。目標の75万台を超える計算だ。昨年実績は73万6000台。FTI自動車部門の広報担当者は、全体の自動車輸出金額が今年は過去最多の1兆バーツ(314億ドル)と、コロナ禍前の2019年の7860億バーツを大きく上回るとみる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、ガザ軍事作戦拡大 国連診療所などへの攻

ワールド

マスク氏、近く政権離脱か トランプ氏が側近に明かす

ビジネス

欧州のインフレ低下、米関税措置で妨げられず=仏中銀

ワールド

米NSC報道官、ウォルツ補佐官を擁護 公務でのGメ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 9
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 10
    トランプ政権でついに「内ゲバ」が始まる...シグナル…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中