脱炭素目指す中国 課題は再生エネより「世界最大規模」電力網の刷新
だが、導入済み総発電容量が2201GWと世界最大の電力システムを運用する中国は、なおも再生可能エネルギーを推進する(米国は1107GW)。
2030年までには、送配電事業者に対し、扱う電力のうち最低40%を化石燃料以外のエネルギー源による電力で賄うよう義務付ける予定だ。現在、その比率は28%前後だ。
電力網投資の主なコストは
コンサルティング会社ウッド・マッケンジーで調査責任者を務めるアレックス・ウィットワース氏は、電力網への投資ペースは20年代末まで維持される可能性が非常に高く、同時期の再生可能エネルギー発電所の新設費用の5倍に達するだろうと語る。
アナリストや当局者によれば、主なコストは送電線の新設費用、数百カ所の石炭火力発電所をバックアップ電源として再編する費用、蓄電容量の増強費用などになるという。
国家電網では太陽光、風力、水力による発電所が主に立地する国内最西部の地域と大都市圏との接続を改善するため、今後5年間で超高電圧の送電線を少なくとも7系統新設すると話している。すでに導入されているのは29系統だ。
この構築コストは、340億ドルと推定されている。
かつて国家電網の社長を務め、現在は国内第2位の発電事業者フアネン・グループ(華能集団)社長であるシュー・インビャオ氏は「中国が石炭火力発電所を維持するという合意には達しているが、あくまでも緊急時のバックアップ用だ」と語る。
だが、再生可能エネルギーによる発電量の変動の埋め合わせができるよう石炭火力発電所を改良するには費用がかさみ、遅々として進んでいない。300メガワット級の石炭火力発電所の改良には、通常1億5000万元(2327万ドル)のコストがかかる。
国家電網と中国電力委員会のデータによれば、中国国内の石炭火力発電所のうち、改良が済んだものは約10%にすぎない。
「中国は、再生可能エネルギーが好調なタイミングで石炭火力が不利になるようなメカニズムを確立する必要がある」と語るのは、ドラワールド・エナジー・リサーチ・センターのツァン・シューウェイ所長だ。「さもなければ、中国がグリーン・アジェンダ(地球環境保護の取組み)を前進させることはできない」