最新記事

環境

脱炭素目指す中国 課題は再生エネより「世界最大規模」電力網の刷新

2021年5月23日(日)11時01分

だが、導入済み総発電容量が2201GWと世界最大の電力システムを運用する中国は、なおも再生可能エネルギーを推進する(米国は1107GW)。

2030年までには、送配電事業者に対し、扱う電力のうち最低40%を化石燃料以外のエネルギー源による電力で賄うよう義務付ける予定だ。現在、その比率は28%前後だ。

電力網投資の主なコストは

コンサルティング会社ウッド・マッケンジーで調査責任者を務めるアレックス・ウィットワース氏は、電力網への投資ペースは20年代末まで維持される可能性が非常に高く、同時期の再生可能エネルギー発電所の新設費用の5倍に達するだろうと語る。

アナリストや当局者によれば、主なコストは送電線の新設費用、数百カ所の石炭火力発電所をバックアップ電源として再編する費用、蓄電容量の増強費用などになるという。

国家電網では太陽光、風力、水力による発電所が主に立地する国内最西部の地域と大都市圏との接続を改善するため、今後5年間で超高電圧の送電線を少なくとも7系統新設すると話している。すでに導入されているのは29系統だ。

この構築コストは、340億ドルと推定されている。

かつて国家電網の社長を務め、現在は国内第2位の発電事業者フアネン・グループ(華能集団)社長であるシュー・インビャオ氏は「中国が石炭火力発電所を維持するという合意には達しているが、あくまでも緊急時のバックアップ用だ」と語る。

だが、再生可能エネルギーによる発電量の変動の埋め合わせができるよう石炭火力発電所を改良するには費用がかさみ、遅々として進んでいない。300メガワット級の石炭火力発電所の改良には、通常1億5000万元(2327万ドル)のコストがかかる。

国家電網と中国電力委員会のデータによれば、中国国内の石炭火力発電所のうち、改良が済んだものは約10%にすぎない。

「中国は、再生可能エネルギーが好調なタイミングで石炭火力が不利になるようなメカニズムを確立する必要がある」と語るのは、ドラワールド・エナジー・リサーチ・センターのツァン・シューウェイ所長だ。「さもなければ、中国がグリーン・アジェンダ(地球環境保護の取組み)を前進させることはできない」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国、米関税の影響大きい企業と労働者を支援 共産党

ビジネス

スイス経済、世界的リスクの高まりに圧迫される公算大

ビジネス

円債、入れ替え中心で残高横ばい 国内株はリスク削減

ビジネス

英小売売上高、3月は予想外の増加 先行き厳しい
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 2
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 3
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考えるのはなぜか
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 6
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 7
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 8
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    欧州をなじった口でインドを絶賛...バンスの頭には中…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中