脱炭素目指す中国 課題は再生エネより「世界最大規模」電力網の刷新
技術上の問題
もう1つの障害が、蓄電テクノロジーの問題だ。
IHSマークイットでシニアリサーチアナリストを務めるビン・ハン氏は、中国は新たな太陽光・風力発電ニーズを支えるために、約120GWの予備電力を確保する必要があると推測している。中国エネルギー備蓄協会によれば2019年時は32.3GWであり、この4倍以上に相当する。
ウッド・マッケンジーのウィットワース氏は、バッテリーによる蓄電容量に関して、中国が2030年までに47GW時相当を導入すると推測している。これは現時点での全世界の蓄電容量の4倍以上だ。
だが、問題はコストだけではない。中国当局者は技術開発の遅れも懸念しているという。
中国生態環境省気候変動対策部のリ・ガオ部長は、4月の記者会見で「蓄電技術においては、革新的な進歩が実現していない」と語った。
英オックスフォード大学エネルギー研究所で中国エネルギー研究プログラムの責任者を務めるマイケル・メイダン氏は、中国と西側諸国のあいだの「地政学的な緊張」と「テクノロジー分野での競合」も、中国政府による予備電力確保を改善するために必要な協力を妨げている可能性があるという。
「中国にはイノベーションは無理だということではなく、国産のイノベーションを実現するには時間がかかる可能性があるという意味だ」とメイダン氏は言う。
他のアナリストは、再生可能エネルギーによる発電計画に対する中国の本気度に疑問を投げかける。石炭からの撤退に関して透明性が欠けており、新たな石炭火力発電所の拡大も続いているからだ。中国では2020年に新たな石炭火力発電所38.4GW相当が稼働開始しており、これは他国で建設されたものの3倍以上に当たる。
とはいえ、地球の未来に不可欠なプロジェクトの重要な最初の1歩が電力システムへの取り組みであることには誰もが同意する。
「中国が参加しなければ、世界は気候変動に関する目標を達成することなどできない」とLSEのシー氏は言う。「世界における中国の役割は今や非常に大きく、直近の未来における中国の行動は、世界が今後どのような道を歩むかを左右する」
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