最新記事

仮想通貨

ビットコインが定着するか崩壊するか、運命が決まる時は間もなく来る

TOO BIG TO FAIL?

2021年4月14日(水)18時56分
アダム・ピョーレ(ジャーナリスト)

210413P18atm_BCN_05.jpg

銀行のATMと同様のサービスも利用できる ANGEL GARCIAーBLOOMBERG/GETTY IMAGES


それでも、いわば「デジタル金塊」のように価値の貯蔵手段として仮想通貨を大量購入する動きが進んでいる以上、欧米の規制当局が取引そのものを禁止することはまず不可能だと、ロゴフはみる。「影響力が大きい人たちが買いに走っているが、追跡が容易でない形で取引が行われることは公共の利益に反する」

何らかの形での規制は避けられない、というのだ。「(仮想通貨の推進派が)政治家を買収するかもしれないが、金融当局は今の動きを注意深く見守っている。彼らは私にこう言うんだ。『状況がエスカレートすれば取り締まらざるを得ないが、今のところは様子見だ。事態を見極めつつ準備を進めている』とね」

いずれは各国政府が規制に乗り出し、小売業者がビットコイン決済を導入することも金融機関がビットコイン関連サービスを提供することも禁止されるだろうと、ロゴフはみる。

実際、ドナルド・トランプ政権の末期には規制が加速し、仮想通貨の取引所に取引記録の保存や情報開示を義務付ける法案が作成された。

スティーブン・ムニューシン前財務長官は業界の反発を恐れてか、クリスマス直前に同案を発表。パブリックコメントの聴取期間を15日に限定したが、業界のロビイストは休暇を返上して作業を進め、規制反対のコメントを7000件余り提出した。

今の相場は長続きしない

結局、業界の猛反発に押される形で米財務省は聴取期間の延長を認め、仮想通貨の規制はジョー・バイデン政権に持ち越された。ブロックチェーン協会のスミスは、バイデン政権は資金洗浄対策として「はるかに合理的なアプローチ」を取るだろうと期待している。銀行は顧客が引き出した現金をどう使うか追跡する義務はないのに、仮想通貨の取引所だけに追跡を義務付けるのは不公平だ、というのだ。

ロゴフほどはっきりと「規制は不可避」と断言しなくとも、元規制当局者や専門家らは口をそろえて今のビットコイン相場は長続きしないと警告する。仮想通貨が「価値ある資産と見なされるようになったのは、ただ単に多くの人々が価値ある資産だと思い込んでいるからだ」と、インドの中央銀行の総裁も務めたシカゴ大学のラグラム・ラジャン教授は指摘する。「それは経済学者がバブルと呼ぶ現象の特徴だ。人々の熱が冷めれば、相場は一気に崩れる」

実際、ビットコインの乱高下は語り草になっている。18年末に底を突いて以降、全体としては上昇基調が続いているが、上がり始めてから今の高値水準に達した昨秋までにも大幅な変動を繰り返してきた。

これが既存通貨なら中央銀行が何らかの介入を試みるだろうが、仮想通貨の相場の安定には誰も責任を持たない。「例えば金にはそれ自体の価値があるが、(ビットコインは)そうした本質的な価値を持たない」と、ラジャンは言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米バークシャー、24年は3年連続最高益 日本の商社

ワールド

トランプ氏、中国による戦略分野への投資を制限 CF

ワールド

ウクライナ資源譲渡、合意近い 援助分回収する=トラ

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中