ビットコインが定着するか崩壊するか、運命が決まる時は間もなく来る
TOO BIG TO FAIL?
それでも、いわば「デジタル金塊」のように価値の貯蔵手段として仮想通貨を大量購入する動きが進んでいる以上、欧米の規制当局が取引そのものを禁止することはまず不可能だと、ロゴフはみる。「影響力が大きい人たちが買いに走っているが、追跡が容易でない形で取引が行われることは公共の利益に反する」
何らかの形での規制は避けられない、というのだ。「(仮想通貨の推進派が)政治家を買収するかもしれないが、金融当局は今の動きを注意深く見守っている。彼らは私にこう言うんだ。『状況がエスカレートすれば取り締まらざるを得ないが、今のところは様子見だ。事態を見極めつつ準備を進めている』とね」
いずれは各国政府が規制に乗り出し、小売業者がビットコイン決済を導入することも金融機関がビットコイン関連サービスを提供することも禁止されるだろうと、ロゴフはみる。
実際、ドナルド・トランプ政権の末期には規制が加速し、仮想通貨の取引所に取引記録の保存や情報開示を義務付ける法案が作成された。
スティーブン・ムニューシン前財務長官は業界の反発を恐れてか、クリスマス直前に同案を発表。パブリックコメントの聴取期間を15日に限定したが、業界のロビイストは休暇を返上して作業を進め、規制反対のコメントを7000件余り提出した。
今の相場は長続きしない
結局、業界の猛反発に押される形で米財務省は聴取期間の延長を認め、仮想通貨の規制はジョー・バイデン政権に持ち越された。ブロックチェーン協会のスミスは、バイデン政権は資金洗浄対策として「はるかに合理的なアプローチ」を取るだろうと期待している。銀行は顧客が引き出した現金をどう使うか追跡する義務はないのに、仮想通貨の取引所だけに追跡を義務付けるのは不公平だ、というのだ。
ロゴフほどはっきりと「規制は不可避」と断言しなくとも、元規制当局者や専門家らは口をそろえて今のビットコイン相場は長続きしないと警告する。仮想通貨が「価値ある資産と見なされるようになったのは、ただ単に多くの人々が価値ある資産だと思い込んでいるからだ」と、インドの中央銀行の総裁も務めたシカゴ大学のラグラム・ラジャン教授は指摘する。「それは経済学者がバブルと呼ぶ現象の特徴だ。人々の熱が冷めれば、相場は一気に崩れる」
実際、ビットコインの乱高下は語り草になっている。18年末に底を突いて以降、全体としては上昇基調が続いているが、上がり始めてから今の高値水準に達した昨秋までにも大幅な変動を繰り返してきた。
これが既存通貨なら中央銀行が何らかの介入を試みるだろうが、仮想通貨の相場の安定には誰も責任を持たない。「例えば金にはそれ自体の価値があるが、(ビットコインは)そうした本質的な価値を持たない」と、ラジャンは言う。