最新記事

仮想通貨

ビットコインが定着するか崩壊するか、運命が決まる時は間もなく来る

TOO BIG TO FAIL?

2021年4月14日(水)18時56分
アダム・ピョーレ(ジャーナリスト)

210413P18musk_BCN_06cutout.jpg

テスラのマスクもビットコインに投資 HANNIBAL HANSCHKEーREUTERS


ブロックチェーン協会のクリスティン・スミス事務局長によると、ブルックスの下でOCCは仮想通貨に関する一連の「解釈指針」を発表し、その合法性と関連リスクを心配する金融機関を安心させた。今年1月には、OCCは仮想通貨管理会社アンカレッジとプロテゴに銀行としての免許を付与。これにより両社は、大手金融機関の仮想通貨保管業務を請け負えるようになった。

こうした一連の措置は、仮想通貨管理会社が合法的な組織であると同時に、従来型の金融機関と同じように政府の規制対象になるというメッセージを送ることになった。

劇的に変わった金融業界の態度

おかげでここ数カ月、従来型の金融業界の仮想通貨に対する態度は劇的に変わってきた。それが今年2月、仮想通貨のメインストリーム入りという大きな飛躍につながった。

まず、世界最大規模の資産運用会社ブラックロックが「ビットコインを始めた」ことを認めた。モルガン・スタンレーも、一部顧客のためにビットコインを購入し始めたことを発表。ゴールドマン・サックスは廃止寸前だった仮想通貨取引デスクを復活させたし、バンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BNYメロン)も、今年中にデジタル資産部門を設置する計画を明らかにした。

テスラのマスクは、決済会社スクエアを経営するジャック・ドーシーと提携してビットコインに15億ドル投資したほか、テスラ車の支払いにビットコインを使用することを発表した。宇宙旅行を販売するヴァージン・ギャラクティックも、支払いにビットコインを使えるようにした。

昨年には財務管理・分析サービスのマイクロストラテジーが転換社債などで資金調達しビットコインを大量購入していることも注目を集めた。CEOのマイケル・セーラーはFRB(米連邦準備理事会)がコロナ対策で金融緩和に突き進むのを見て、株主に十分な配当を保証するにはそれしか選択肢はないと判断したと言う。「超低金利下でインフレが加速しそうな状況で、銀行にカネを預ける経営者はいない」

もっとも企業経営者や資産家が大量購入に乗り出したからといって、仮想通貨が定着するとは限らない。ビットコイン相場の先行きに懐疑的な専門家もいる。ハーバード大学の経済学教授で元IMFチーフエコノミストのケネス・ロゴフもその1人。コロナ禍による景気減速がもたらした今の特殊な状況では予測は困難だと、彼は言う。「金利が上がり始めたら、もう少し見通しが良くなる。ビットコインが長期的に価値を持つには、仮想通貨を別の仮想通貨と替えるような(一部のマニアックな投資家の)取引にとどまらず、広く利用されるようになる必要がある」

ロゴフはよほどのことがない限り、仮想通貨の利用はさほど進まないとみている。問題はマイナス面を補うほどの価値があるかどうかだ。ロゴフによれば、ビットコインは「筋肉増強剤を打った現金」のようなもの。追跡不可能なのは現金と同じだが、現金より動かしやすい。テロ組織や犯罪組織が好んで使うのはそのためだ。マネーロンダリング(資金洗浄)などに悪用されないよう仮想通貨にどう規制をかければいいのか、各国政府や中央銀行はまだ答えを出しかねていると、ロゴフは言う。一方、一般の消費者にとってビットコインは取引コストが高くつき、現状ではあまり有用ではない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、中国による戦略分野への投資を制限 CF

ワールド

ウクライナ資源譲渡、合意近い 援助分回収する=トラ

ビジネス

米バークシャー、24年は3年連続最高益 日本の商社

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中