ビットコインが定着するか崩壊するか、運命が決まる時は間もなく来る
TOO BIG TO FAIL?
ブロックチェーン協会のクリスティン・スミス事務局長によると、ブルックスの下でOCCは仮想通貨に関する一連の「解釈指針」を発表し、その合法性と関連リスクを心配する金融機関を安心させた。今年1月には、OCCは仮想通貨管理会社アンカレッジとプロテゴに銀行としての免許を付与。これにより両社は、大手金融機関の仮想通貨保管業務を請け負えるようになった。
こうした一連の措置は、仮想通貨管理会社が合法的な組織であると同時に、従来型の金融機関と同じように政府の規制対象になるというメッセージを送ることになった。
劇的に変わった金融業界の態度
おかげでここ数カ月、従来型の金融業界の仮想通貨に対する態度は劇的に変わってきた。それが今年2月、仮想通貨のメインストリーム入りという大きな飛躍につながった。
まず、世界最大規模の資産運用会社ブラックロックが「ビットコインを始めた」ことを認めた。モルガン・スタンレーも、一部顧客のためにビットコインを購入し始めたことを発表。ゴールドマン・サックスは廃止寸前だった仮想通貨取引デスクを復活させたし、バンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BNYメロン)も、今年中にデジタル資産部門を設置する計画を明らかにした。
テスラのマスクは、決済会社スクエアを経営するジャック・ドーシーと提携してビットコインに15億ドル投資したほか、テスラ車の支払いにビットコインを使用することを発表した。宇宙旅行を販売するヴァージン・ギャラクティックも、支払いにビットコインを使えるようにした。
昨年には財務管理・分析サービスのマイクロストラテジーが転換社債などで資金調達しビットコインを大量購入していることも注目を集めた。CEOのマイケル・セーラーはFRB(米連邦準備理事会)がコロナ対策で金融緩和に突き進むのを見て、株主に十分な配当を保証するにはそれしか選択肢はないと判断したと言う。「超低金利下でインフレが加速しそうな状況で、銀行にカネを預ける経営者はいない」
もっとも企業経営者や資産家が大量購入に乗り出したからといって、仮想通貨が定着するとは限らない。ビットコイン相場の先行きに懐疑的な専門家もいる。ハーバード大学の経済学教授で元IMFチーフエコノミストのケネス・ロゴフもその1人。コロナ禍による景気減速がもたらした今の特殊な状況では予測は困難だと、彼は言う。「金利が上がり始めたら、もう少し見通しが良くなる。ビットコインが長期的に価値を持つには、仮想通貨を別の仮想通貨と替えるような(一部のマニアックな投資家の)取引にとどまらず、広く利用されるようになる必要がある」
ロゴフはよほどのことがない限り、仮想通貨の利用はさほど進まないとみている。問題はマイナス面を補うほどの価値があるかどうかだ。ロゴフによれば、ビットコインは「筋肉増強剤を打った現金」のようなもの。追跡不可能なのは現金と同じだが、現金より動かしやすい。テロ組織や犯罪組織が好んで使うのはそのためだ。マネーロンダリング(資金洗浄)などに悪用されないよう仮想通貨にどう規制をかければいいのか、各国政府や中央銀行はまだ答えを出しかねていると、ロゴフは言う。一方、一般の消費者にとってビットコインは取引コストが高くつき、現状ではあまり有用ではない。