ビットコインが定着するか崩壊するか、運命が決まる時は間もなく来る
TOO BIG TO FAIL?
18年1月、ノボグラッツはギャラクシー・デジタルという会社を立ち上げた。その目標は、「仮想通貨界のゴールドマン・サックス」になること。つまり、「業界で一番頭のいい人間」が仮想通貨の取引業務やコンサルティング業務、そして投資銀行業務を提供する会社になることだ。そのためには、ビットコインが永久資産として金融業界のメインストリームに認められる必要がある。
そこでノボグラッツのチームは、マイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長を説得して、ブルームバーグの金融情報サービスに「ブルームバーグ・ギャラクシー仮想通貨インデックス(BGCI)」を作ってもらった。これはビットコインやイーサリアム、リップルなど主要な仮想通貨の値動きを示す指数で、ブルームバーグの端末を利用する世界30万人以上の金融業界関係者に、「仮想通貨はもう怪しい資産ではない」と思ってもらう効果があった。
メインストリームの金融機関の関心が高まると、ビットコイン投資に必要なインフラを提供する企業が続々と登場するようになった。なかでも重要なのは、ニューヨーク証券取引所などを傘下に置くインターコンチネンタル取引所(ICE)が、18年8月に立ち上げた子会社バックトだろう。CEOを務めるのはジェフリー・スプレチャーICE会長の妻で、後にジョージア州選出の上院議員を務めたケリー・ローフラーだ。
バックトは、ビットコインのカストディアン(保管機関)としてニューヨーク州当局の許可を得ただけでなく、ビットコインの先物取引を行う許可も取得した。この先物は、19年9月にICEに上場すると、1年後には1日の取引高が1万5955BTC(当時の価値で2億ドル)にも達するようになった。
フェイスブックの人気者であるタイラーとキャメロンのウィンクルボス兄弟が立ち上げた仮想通貨取引所ジェミナイ・トラストも、仮想通貨の怪しいイメージを払拭する上で大きな役割を果たした。なかでも重要だったのは、ジェミナイが19年9月にノア・パールマンを最高コンプライアンス責任者に採用したことだ(現在は最高執行責任者)。
パールマンは米麻薬取締局(DEA)の法務顧問や、連邦検事補、モルガン・スタンレーのマネジングディレクターといった経歴の持ち主で、金融業界だけでなく、規制当局のマインドセットにも精通していた。仮想通貨取引所コインベースのブライアン・ブルックス最高コンプライアンス責任者も、連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)の法務部長を務めた経験がある。
ブルックスは、コインベースに2年間勤めた後の20年、米通貨監督庁(OCC)の上級通貨監査官および最高執行責任者(COO)に就任した。OCCは財務省傘下の政府機関で、アメリカの大手金融機関を監督するとともに、連邦レベルの営業免許を与える権限を持つ。