ティファニーは「眠れる美女」 LVMHによる買収完了、大改革へ
仏高級ブランドLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)は、今月買収を完了した米宝飾品大手ティファニーの多岐にわたる品ぞろえを抜本的に見直す構えだ。写真はニューヨークのティファニー店舗のサイン。2020年9月撮影(2021年 ロイター/Carlo Allegri)
仏高級ブランドLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)は、今月買収を完了した米宝飾品大手ティファニーの多岐にわたる品ぞろえを抜本的に見直す構えだ。これまでよりも金や高価な宝石などの高級商品に重点を置き、ブレスレットなどの銀製品についても高級路線にシフトしていくとみられる。
ティファニーの経営内部を知る2人を含む関係者6人によると、LVMHはティファニー店舗の外装を刷新し、欧州・アジア展開を強化する可能性も高い。
ティファニーは世界に320店舗を構え、その3分の1以上が米国内にある。関係者2人は、一部の店舗は時代遅れでみすぼらしく、改装の必要があると語った。
このうち1人は「LVMHに買収されたことで、ティファニーは商品の品ぞろえと世界中の店舗に大規模投資を行うとともに、それが中期的に実を結ぶのを待つだけの時間と資金が得られる」と話した。
きらびやかな装飾品に焦点
LVMHが新たな経営チームを送り込んだ翌日の1月8日、新経営陣らはニューヨークのホールからティファニーの従業員1万4000人に向け、高級路線のきらびやかな宝飾品に焦点を絞る当初計画を披露した。出席者の1人が明らかにした。
LVMHの考え方に詳しい別の関係者によると、同社はティファニーの腕時計の品ぞろえ拡充も検討している。
スイスの高級ブランド大手リシュモン傘下のカルティエやヴァン・クリーフ&アーペル、そしてLVMH傘下のブルガリといった競合他社に比べ、ティファニーの商品は150ドル(訂正、約1万6000円)の銀製ペンダントから数千万ドルのダイヤモンドのネックレスに至るまで、その価格帯の幅広さに特徴がある。
銀商品の粗利ざやは90%前後と高いうえ、初めて宝飾品に手を出す若者や、あまり財力のない消費者にはもってこいだ。しかし専門家によると、トップブランドとして唯一無二の「オーラ」を醸し出すには、10万ドル以上する中・高級商品も取りそろえる必要がある。
「注文の多い」新オーナーを懸念する声も
フランスきっての大富豪、ベルナール・アルノーLVMH会長は8日のホールでの会合で従業員向けにビデオメッセージを届け、時間がかかってもティファニーの地位を引き上げたいと述べた。
出席者の1人によると、アルノー氏は「短期的な制約よりも、ティファニーが長期的に目指す理想を優先する」と発言。ティファニーの象徴である「ティファニーブルー」の包装箱を振りかざしながら、これからはLVMHの豊富な資金力をあてにできると強調した。
世界最大の高級ブランドグループであるLVMHは、コロナ禍で空港店舗の販売が落ち込んだが、傘下の幾つかの最大級ブランドは堅調を保っている。
それでもティファニー従業員の一部には心配ムードがある。
欧州店舗のある幹部は、LVMHのおかげで洗練度が高まり、卓越したブランドになると予想する一方、「注文の多い」事業オーナーというLVMHの定評が気掛かりだと話す。