ティファニーは「眠れる美女」 LVMHによる買収完了、大改革へ
「あまりうまくいっていない店舗は、すぐに閉鎖されてしまう」
アルノー氏は、自社店舗を抜き打ち訪問することで知られる。2019年末に買収計画が発表された後には、韓国ソウルのティファニー店舗を訪れ、清掃用具が出しっ放しだ、商品に「品切れ」と書かれたピンクの付せんが貼ってある、などと細かい不手際を指摘した。関係者が明らかにした。
LVMHとティファニーはコメントを控えた。
ブランド統合のシナジーを期待
LVMHとティファニーは買収を巡って訴訟合戦を繰り広げた末、買収価格をわずかに引き下げて総額158億ドルとすることで最終合意した。その後、アルノー氏はティファニー側をなだめる発言をしている。
ニューヨークの8日の会合では、ここ数カ月にティファニーが見せた底力はLVMHの期待を上回ったと持ち上げた。出席者の1人が明らかにした。LVMHは以前、ティファニーはコロナ禍中の経営がお粗末で、見通しは「悲惨」だとしていた。
ティファニーは直近の四半期、オンライン販売や中国事業でいくらか失地を挽回した。コロナ禍の間、宝飾品業界は全般に他の業界より底堅く推移している。ここ数年、宝飾品は高級品セクターの中で最も成長が著しい分野のひとつだ。
ティファニーは競合他社に比べ、アジア太平洋地域での事業展開が小さい。同地域は高級品販売のけん引役で、19年には世界の販売総額44億ドルの28%を占めた。これに対し、欧州の割合は11%だ。
11年にLVMH傘下に入ったイタリアの高級品ブランド、ブルガリのジャンクリストフ・ババン最高経営責任者(CEO)はロイターのインタビューで、ショッピングモール経営者と店舗の交渉をする時も、空港と広告掲示板への掲載で交渉する時も、数十のブランドを傘下に収める一大グループとして対峙したが、はるかに有利だと語った。
「到着ロビーのスクリーンを(LVMH傘下の高級時計ブランド、タグ・ホイヤーと)共有できる」と説明。「わが社にはこうしたシナジー効果があったし、ティファニーもそれを得て収益性が向上するだろう」と述べた。
「このブランド(ティファニー)は眠れる美女だった。LVMHの登場が目覚ましになる」とババン氏は言う。
マーケティング攻勢か
1837年創業のティファニーは、オードリー・ヘップバーンが主演した1961年の映画「ティファニーで朝食を」から世界的な名声を得た。そして今、フレッシュな広告攻勢をかければ新たな支えになるかもしれない。
アルノー氏の4人の子供の1人、アレクサンドル・アルノー氏(28)がティファニーの執行バイスプレジデントに就任し、商品とコミュニケーションを司る。同氏はニューヨークの8日の会合で、広告キャンペーンと若い顧客の獲得に力を入れる方針を示した。
アレクサンドル・アルノー氏は、LVMHによるスーツケースブランド、リモワの買収に助力。同社CEOだった当時は、ディオールとのコラボレーションでリモワのスーツケースをファッションショーに登場させ、流行最先端のイメージを築いた。
ティファニーの新CEOには、ヴィトン幹部だったアンソニー・レドル氏が就任し、アレクサンドル・アルノー氏と二人三脚で経営にあたる。
ティファニーの前CEO、アレッサンドロ・ボリオーロ氏はニューヨーク五番街にある旗艦店を数年かけて改装してきた。同氏の下で購入した80カラットを超えるオーバル・ダイヤモンドはネックレスにセットされ、同社で最も高価な宝飾品となる予定だ。
(Francesca Piscioneri記者、Silvia Aloisi記者、Sarah White記者)
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