最新記事

M&A

ティファニーは「眠れる美女」 LVMHによる買収完了、大改革へ

2021年2月1日(月)10時04分

仏高級ブランドLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)は、今月買収を完了した米宝飾品大手ティファニーの多岐にわたる品ぞろえを抜本的に見直す構えだ。写真はニューヨークのティファニー店舗のサイン。2020年9月撮影(2021年 ロイター/Carlo Allegri)

仏高級ブランドLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)は、今月買収を完了した米宝飾品大手ティファニーの多岐にわたる品ぞろえを抜本的に見直す構えだ。これまでよりも金や高価な宝石などの高級商品に重点を置き、ブレスレットなどの銀製品についても高級路線にシフトしていくとみられる。

ティファニーの経営内部を知る2人を含む関係者6人によると、LVMHはティファニー店舗の外装を刷新し、欧州・アジア展開を強化する可能性も高い。

ティファニーは世界に320店舗を構え、その3分の1以上が米国内にある。関係者2人は、一部の店舗は時代遅れでみすぼらしく、改装の必要があると語った。

このうち1人は「LVMHに買収されたことで、ティファニーは商品の品ぞろえと世界中の店舗に大規模投資を行うとともに、それが中期的に実を結ぶのを待つだけの時間と資金が得られる」と話した。

きらびやかな装飾品に焦点

LVMHが新たな経営チームを送り込んだ翌日の1月8日、新経営陣らはニューヨークのホールからティファニーの従業員1万4000人に向け、高級路線のきらびやかな宝飾品に焦点を絞る当初計画を披露した。出席者の1人が明らかにした。

LVMHの考え方に詳しい別の関係者によると、同社はティファニーの腕時計の品ぞろえ拡充も検討している。

スイスの高級ブランド大手リシュモン傘下のカルティエやヴァン・クリーフ&アーペル、そしてLVMH傘下のブルガリといった競合他社に比べ、ティファニーの商品は150ドル(訂正、約1万6000円)の銀製ペンダントから数千万ドルのダイヤモンドのネックレスに至るまで、その価格帯の幅広さに特徴がある。

銀商品の粗利ざやは90%前後と高いうえ、初めて宝飾品に手を出す若者や、あまり財力のない消費者にはもってこいだ。しかし専門家によると、トップブランドとして唯一無二の「オーラ」を醸し出すには、10万ドル以上する中・高級商品も取りそろえる必要がある。

「注文の多い」新オーナーを懸念する声も

フランスきっての大富豪、ベルナール・アルノーLVMH会長は8日のホールでの会合で従業員向けにビデオメッセージを届け、時間がかかってもティファニーの地位を引き上げたいと述べた。

出席者の1人によると、アルノー氏は「短期的な制約よりも、ティファニーが長期的に目指す理想を優先する」と発言。ティファニーの象徴である「ティファニーブルー」の包装箱を振りかざしながら、これからはLVMHの豊富な資金力をあてにできると強調した。

世界最大の高級ブランドグループであるLVMHは、コロナ禍で空港店舗の販売が落ち込んだが、傘下の幾つかの最大級ブランドは堅調を保っている。

それでもティファニー従業員の一部には心配ムードがある。

欧州店舗のある幹部は、LVMHのおかげで洗練度が高まり、卓越したブランドになると予想する一方、「注文の多い」事業オーナーというLVMHの定評が気掛かりだと話す。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

欧州市場は機能、必要に応じて手段提供へ 為替注視と

ビジネス

中国が報復措置、対米関税125%に 引き上げでこれ

ワールド

ガザの医薬品が極端に不足、支援物資搬入阻止で=WH

ビジネス

中国、株式に売り越し上限設定 ヘッジファンドなど対
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税大戦争
特集:トランプ関税大戦争
2025年4月15日号(4/ 8発売)

同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 9
    「やっぱり忘れてなかった」6カ月ぶりの再会に、犬が…
  • 10
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中