コロナパンデミックが変えたXマス商戦 臨時採用は接客から倉庫に
小売業の新世界
観光バス会社で働いていて4月に解雇されたアラバマ州のカイラ・フレデリックさん(31)は11月、人生初めての季節労働に携わるようになった。地元の衣料品店の倉庫での仕事だ。オンラインの注文を受け、在庫を取り出し、タグ付けなどの作業にあたる。
「こんなに長く解雇されたままになるとは予想していなかった。この仕事があってありがたい」と話す。
英郵便事業のロイヤル・メールは今年、季節従業員の採用を3万3000人と、昨年の2万人から増やした。米労働統計局のデータからは、米配送大手フェデックスも昨年の5万5000人から7万人に増やしていることが分かる。
グラスドアのシニアエコノミスト、ダニエル・ジャオ氏はこうした動きについて、「小売業にとって新たな世界への扉になりそうだ」と言う。「パンデミック中に必要から生まれた現象が恒常化し、今後はクリスマスシーズンは毎年オンラインで買い物をする慣例になる可能性が高い」とみる。
グラスドアによると、配送用トラックの運転手、倉庫作業員、オンライン受注受け付けスタッフなど電子商取引絡みの求人への応募は、米国で前年比120%、英国で45%、それぞれ急増した。
カリフォルニア南部の大学生、オスカー・ジミネスさん(22)は幸運な1人だ。10月に小売店で季節限定の職を得られた。ただ、店頭で接客するのだと思っていたら、そうではなく、店の裏手の倉庫で働いている。応募時の業務内容とは違うが、「注文を受け、建物内を歩き回り、オンラインで購入された品物を探し、店先受け取りか宅配の準備を整える」忙しい毎日だ。
一部のスーパーマーケットも採用を増やしている。英テスコは季節従業員の採用を昨年より2000人増やした。ロックダウン(封鎖)の動向が不透明だったため、学生向け求人サイトへの掲載は例年より1カ月遅かったが、にもかかわらず、サイトのデータによると応募者は昨年の2倍だ。
一方でドイツのスーパー大手、リドルは今年、昨年より40%多い2400人の見習社員を受け入れた。同社と米アマゾン・ドット・コムは需要の急増に対処するため、今年の初めからスタッフを大幅に増やしてきたため、季節労働者を採用する必要性は薄れている。
アマゾンは9月の時点で、年初からスタッフを既に27万5000人増やしたため、米国での季節従業員の採用は昨年の半分の10万人にとどめたと説明している。
(Victoria Waldersee記者、Melissa Fares記者、Nivedita Balu記者)