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ステーキ、フォアグラ...どんなに食べても「食べ放題」で絶対に元を取れないワケ

2020年12月2日(水)17時45分
松本 健太郎(データサイエンティスト) PRESIDENT Onlineからの転載

開店時間を迎えてスタッフの案内で着席したとたん、まるで悪魔が獲物を漁るかのような勢いでお目当ての品に向かってみんな飛び掛かかります。それが最後の最後まで続くのですから、正直ちょっと怖い。ただし、大阪では日常茶飯事です。

人はなぜ「元が取れる」と誤解するのか

普通の食事なら元を取ろうとは思いません。そもそもメニューが決まっていて取りようがありません。出された水をいっぱい飲もう、取り放題の紅生姜をいっぱい食べようなんて考える人はまずいません。

一方、高級寿司や焼き肉の食べ放題では、「元を取ろう」とする行動が多く見られます。原価が高そうに見える「食べ放題」には、人を強欲な悪魔に変える何かがあるのです。おそらくは「いっぱい食べれば元が取れるかもしれない」という仮説が、「元が取れるにもかかわらず、食べなかったら損をする」という感情を引き起こしているのでしょう。

これは関西人がケチだからではなく、どんな人間でも「損をしたくない」という本能をもっているからです。これを「損失回避」「サンクコストの誤謬」と言います。


【損失回避】Loss aversion

利益の獲得より、損失の回避を好む傾向。人間はとにかく損をしたくない生き物。行動経済学におけるプロスペクト理論を構成する1要素でもあります。

●具体例
(A)確実に1万円を貰える。(B)50%の確率で2万円を貰えるが、50%の確率で0円になる。どちらかの選択肢を迫られると、多くの人は(A)を選びます。中にはリスクをとって(B)を選ぶ人もいるかもしれません。(C)確実に1万円を失う。(D)50%の確率で2万円を失うが、50%の確率で0円になる。一方で、趣旨が利益から損失になると、多くの人は(D)を選びます。どちらも平均1万円を得るか失うかなのですが、1万円を得る喜びと、1万円を失う悲しみは同義ではないのです。少しでも「損をしない可能性」に賭けたいのです。似たような状況として「株の損切り」が考えられます。株価が下がっても、もしかしたらチャラになるかもと考えて売り出せず、余計に損失を被ってしまうのです。


【サンクコストの誤謬】Sunk cost fallacy

今まで投資したコスト(お金・時間・労力)のうち、撤退・中止しても戻ってこない分をサンクコストと呼ぶ。サンクコストの誤謬とは、今まで投資したコストが無駄になる恐怖から、これまで行ってきた行為を正当化するために、非合理的な判断を行う状態を指します。

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