最新記事

日本社会

ドタバタ続きの「GoToトラベル」 北海道周遊して分かったコロナ禍の観光業の今

2020年10月14日(水)17時00分
八田 裕之(週末旅行家) *東洋経済オンラインからの転載

留辺蘂駅から路線バスで温根湯(おんねゆ)温泉へ向かう。宿は相当な感染対策を実施していた。検温、フロントにはアクリル板。エレベーターへの廊下にもソーシャルディスタンスの目印。浴場のロッカーも間引き、サウナも人数制限。聞くと、もともとインバウンドも多くその分は厳しいが、週末やシルバーウィークなどGoTo利用の予約が増えているとのこと。この辺り、観光地はないのにインバウンド?と怪訝に思ったが、札幌から知床などに向かう中間地点として最適なのだそうだ。

翌日も普通列車で網走に向かい、釧網本線でオホーツク海の絶景と斜里岳の堂々たる山容を眺め、摩周に至った。釧網本線は特急列車もなく1日数本の普通列車のみ、それも単行なので、8割方は座席が埋まる状態であった。

弟子屈(てしかが)町にある摩周温泉は民宿を除けば温泉ホテルは1軒しか残っていない。過去栄えていた面影はなく、廃墟となった旅館が並ぶ光景は寂しい。

ホテル摩周の代表に状況を伺う。工事関係者の割合が大きく、宿の規模も大きくないのでインバウンドは個人のみ、団体は受けていなかったことが幸いして大変な影響まではなかった。ただ、ゴールデンウィークだけは工事関係者も休みになり、まったく動かず苦しかった。今はGoToもあって戻っているという。

窓の開く列車で景色を堪能

reuters__20201013184249.jpg

車窓に広がる海沿いの景色(筆者撮影)

翌日は普通列車を中心に、釧路を経由して根室本線を縦断。普通列車から窓を開けて眺める広大な海景色は格別だ。

2016年の台風被災で不通が続く新得―東鹿越間を代行バスで移動し滝川に出て、留萌へと向かった。留萌本線も廃線が取り沙汰されているが、深川―石狩沼田間は存続の要望があるという。実際、地元の高校生は石狩沼田でほとんどが降りた。

宿はホテルノースアイ。フロントのビニールシート越しから総支配人に話を聞く。顧客層は工事関係者や近隣の市立病院への営業が多く、それほど影響なかった。近隣のホテル含め平日は満室続き。むしろ人手が足りないぐらいで募集もしているが、接客は敬遠され、報酬が安くても事務職に集まる、とのこと。

寿司屋に入った。大将もマスクをしている。「マスクして握るなんて調子狂っちゃうよ。でもお客さんは呼ばないといけないのに、たくさん来ても困っちゃうし、なんとかならないかねぇ」。

翌朝は国鉄時代からの歴史を感じる留萌駅舎で立ち食いそば。廃止となったらこの情景も消えるのだろうか。

この日は周遊パスの威力を発揮して、特急サロベツで一気に稚内に向かった。

reuters__20201013184251.jpg

国鉄時代の建物が歴史を感じさせる留萌駅。駅舎内には立ち食いそば屋がある(筆者撮影)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中