コロナショックに支援の輪 普及進むクラウドファンディング
「枡」の生産・販売を行う大橋量器は、新型コロナウイルスの感染拡大で3─5月の売り上げが前年比で半減、クラウドファンディングを利用して資金を調達した。写真は大橋量器の枡(2020年 ロイター/大橋量器提供)
結婚式や祝いごとの席に欠かせない「枡」の生産・販売を行う大橋量器(岐阜県大垣市)。代表取締役の大橋博行氏は、コロナ・ショックを機にクラウドファンディングを利用した。新型コロナウイルスの感染拡大で3─5月の売り上げは前年比で半減。「藁にもすがる思い」だったという。その結果、目標の50万円を大幅に上回る約300万円の資金を集め、支援者も366人に上った。大橋氏は「想定外でとても嬉しかった」と話す。
コロナで利用拡大、5月は前年比5倍のファンディング会社も
日本クラウドファンディング協会によると、国内のクラウドファンディングの市場規模は19年度で169億円。17年度の77億円から約2倍になっている。新型コロナでの政府の経済対策は事業規模230兆円にのぼるが、小規模事業者や個人が資金を得るには手間や時間がかかるなどの問題があり、そのすき間を埋めるかたちで利用が広がっている。
大手クラウドファンディング会社・CAMPFIRE(東京・渋谷区)によると、今年5月のクラウドファンディング支援総額は前年同月比6倍(約40億円)に上り、支援者は5月単月で39万人、前年同月比4.8倍になった。資金調達をした事業者のうち、約8割は初めてクラウドファンディングを利用したという。特に、緊急事態宣言発出後に資金を募る事業者が増え、新型コロナ関連のプロジェクト数は2000件に上った。同業他社でも同様の動きがみられた。
大橋量器の大橋氏は、相次ぐ注文のキャンセルを受けて、無利子無担保融資の活用に加え、雇用調整助成金や持続化給付金の申請を行った。だが、手元にキャッシが届くまで時間がかかる上、慣れない手続きにも戸惑ったという。事業を継続するための資金調達手段として思いついたのが、クラウドファンディングだった。
広がる利用先、学生支援も
アルバイト先の休業により収入が減少した学生支援にもクラウドファンディングは活用されている。大手クラウドファンディング会社・READYFOR(東京・千代田区)で資金調達を行った筑波大学事業開発推進室長・山田哲也氏は「学内での基金とは別に(資金調達の)チャンネルを持つために利用した」と話す。目標金額は3000万円。卒業生を中心に1142人が寄付を行い、約2840万円が集まった。
山田氏は「政府も困窮学生への支援メニューを用意しているが、どうしても『収入が減った証明』などのプロセスが必要で、支援が遅れてしまう可能性もある」と指摘。その点、クラウドファンディングはスピード感を持って支援ができると効果を実感している。