コロナショックに支援の輪 普及進むクラウドファンディング
資金調達を超える価値
READYFORを通じて初めて寄付を行った野中良恵氏は「寄付をして本当に良かった」と話す。野中氏は大学教授らなどの有志による「新型コロナウイルス感染症拡大防止基金」を知り、4月中旬頃に5000円を寄付した。その後、オンラインでの報告会があり、支援したお金は一人親世帯や認知症を患う高齢者などに届いたと知った。「自分が寄付したお金がどんな人に届き、どう使われたのか詳細を知ることができ、とても満足度が高かった」。野中氏は、政府の支援だけでは行き届かない認知症の人や、一人親世帯、在宅医療を受ける人に対して今後も寄付を続けたいという。
READYFORの米良はるか代表取締役は、コロナ禍で利用者が急増している背景として「『自分事』としてみんなが大変だという意識が広まっている」と分析。クラウドファンディングは、支援額に応じて商品やサービスなどのリターンを得られる「購入型」、リターンのない「寄付型」、「融資型」などがあるが、「何か世の中に貢献したい」と考える人が増え、同社ではいわゆる「寄付型」のプロジェクト支援者が増加したという。
米良氏は、クラウドファンディングが資金集めの手段として浸透していく可能性も期待する。「コロナ・ショックのような危機下では、融資や投資ではなく寄付などの手段が(事業者にとっては)非常に相性がよい。資金調達の一つの手段として、今後もあり続けるだろう」と話す。
事業者にとってもクラウドファンディングは「ファンを発見するツール」として活躍しそうだ。前述の大橋氏は支援者の中には、取引先や返礼品に興味がある人、地元住民に加えて「枡のファン」も多いと話す。「(枡の)ファンがいるというのは初めて知った」。「今後はファンコミュニティーをつくれないか、新しい枡の楽しみ方を議論できたら」と意気込む。
寄付型の定着なるか、景気悪化が足かせ
クラウドファンディングに詳しいビットリアルティ取締役・谷山智彦氏は、クラウドファンディングの現状について「日本が(海外から)特段遅れているわけではない」と指摘する。
ただ、宗教観や国民性、寄付したお金の用途が不明確だったことを背景に、欧米諸国と比較して寄付型のクラウドファンディングは日本では浸透してこなかった。谷山氏は、寄付型の支援が持続されるには事業者が支援者に対して活動リポートを送るなど、両者の間の「つながり」が重要になると指摘する。
一方、企業業績の悪化や先行きの不透明感から今後、支援者側の所得減少も見込まれる。日本総研・創発戦略センターの渡辺珠子氏は「プロジェクト数としては急増しているが、全案件が目標金額を調達できる可能性は低い」と指摘。年後半は支援者側のお金の出し控えが起きる可能性もあるという。
(編集:石田仁志)
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