コロナショックに直撃された非正規女性 仕事失い生活も苦しく
「ショックだった。別に休みたくて休んだわけじゃなく、休まざるを得なかった。リモートさえやらせてもらえず、自宅待機しかできない。その選択肢しかなかった。今まで一生懸命働いてきたのは何だったのだろうと。今までやってきたことは意味なかったな、と裏切られた感じがした」と、Aさんは語った。
幸い、Aさんはその後別の仕事を見つけ、7月からはそこで働くことになっている。
2歳の娘を持つ小林さん(34)は、パートで医療関係の事務をしている。子どもは保育園に預けているが、新型コロナで仕事が増えて忙しくなり、残業すると保育園の延長料金がかかるため支出が増えているという。また、病院で仕事をしているため周りの目も気にせざるを得ない。
小林さんは3年間別居している夫との間で離婚が成立していないため、一人親への政府の支援が受けられない。夫から養育費をもらっていないので実質的にはシングルマザーだが、セーフティネットで拾われない立場にある。朝から晩まで仕事と育児に追われ、「毎日が綱渡りの生活で、不安は尽きない」という。今は残業が思うようにできていないため、「今後、それを理由に切られる可能性があると思う」と話した。
非正規のシングル一人暮らし
非正規で働く独身一人暮らしの女性たちも、セーフティネットからこぼれ、貧困に陥りやすい層に当たる。
大阪に住む美雪さん(53)は派遣社員として農業用機械を製造する工場で10年前から働いてきたが、4月中旬に、新型コロナによる影響を理由に5月末で契約を打ち切ると言われた。派遣会社からは別の仕事を紹介され、早く受けた方がいいと言われて工場を辞めたが、応募した会社の募集はキャンセルとなった。数日後、製薬会社で派遣の仕事が見つかったが、収入は以前の半分に減った。その仕事も7月末までの契約だ。
「仕事がない不安から余分な出費を抑えなければいけないということで、車を手放した。涙が出た。ここまでしないといけないかな、と思って」と語る。特別給付金は申請したが、まだ届いていない。「一回きりもらったぐらいでは、一日一日生きていかなければいけない者としては、ちょっとしんどい」と話す。
和光大学名誉教授の竹信三恵子氏は、一人暮らしの非正規雇用の女性が支援を受けにくい理由について、日本では「もともと男性が生活費を稼ぎ、女性が足りない部分を補うという働き方(が主流)だったため、女性が失業しても夫の安全ネットがあるからそんなに問題はないと思われている。経済が悪くなったら解雇すべき人たちだと思われている。でも実は違う」と指摘する。
野村浩子氏の試算によると、配偶者のいない約130万人の女性が不安定なパートで生計を立てており、「コロナ渦は、こうした非正規女性の生活を揺るがしている」。さらに非正規雇用で働く女性の約7割が年収150万円未満(2017年「就業構造基本調査」)であり、独身一人暮らしだと当座を乗り切る現金の貯えがあるとは考えにくい。