株式空売り規制が世界的に再燃の動き 市場保護か不当介入か
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一部の国や地域で株式の空売りを禁止する動きがまたぞろ見え始め、自由な市場を提唱する人々と、暴利をむさぼって大企業の安定を損なうとみなす投資家を阻止しようとする当局が再び論争を繰り広げつつある。写真は2011年8月18日、ドイツのフランクフルト証券取引所で撮影(2019年 ロイター/Alex Domanski)
一部の国や地域で株式の空売りを禁止する動きがまたぞろ見え始め、自由な市場を提唱する人々と、暴利をむさぼって大企業の安定を損なうとみなす投資家を阻止しようとする当局が再び論争を繰り広げつつある。
トルコ政府は先月、国内の7つの銀行の空売りを禁止した。米検察がハルクバンクをイラン制裁違反で訴追したことを受けた措置だ。韓国は空売り規制を検討中で、欧州諸国も空売り業者が相場操縦をしているかどうか調査を進めている。また英国の欧州連合(EU)離脱が迫る中で、ドイツやイタリア、オランダは株価の乱高下を避ける目的で、一時的に空売りを禁止する可能性がある。
こうした新たな流れについて、米国の空売り専門調査会社マディー・ウォーターズを立ち上げたカーソン・ブロック氏はロイターに「真実に対して世界的に仕掛けられた戦争だ」と非難した。
空売り禁止の効果は、一部の学者やニューヨーク連銀などが疑問視している。ただ世界全体で見ると、空売り業者の旗色は次第に悪くなりつつあるのかもしれない。
2008年の世界金融危機から12年の欧州債務危機まで相次いだ空売り禁止は、それ以降大幅に減少したが、足元ではブレグジット(英国のEU離脱)と米中貿易摩擦が市場を動揺させ、当局の頭痛の種になっている。このため韓国政府高官は、貿易摩擦を理由に空売り制限を視野に入れていると明かした。
欧州システミックリスク委員会が昨年公表した調査によると、世界金融危機当時は空売り禁止が約20カ国で7000銘柄超を対象に実施され、欧州債務危機の際も、1700銘柄前後の空売りが禁じられた。
欧州証券市場監督局(ESMA)は11年、「空売り自体は妥当な取引戦略の1つだが、偽情報の流布と組み合わせれば明らかな不正に該当する」と指摘。各国は偽情報が広がるのを防ぎ、公平な競争環境を確保する目的で空売りを禁止したと説明していた。
しかしこうした空売り禁止は、市場の自由な取引を阻害し、正確な価格決定に制約を与えるとともに、出来高を抑制して全ての投資家の取引コストを押し上げてしまうとの批判が聞かれる。
ロンドン大学カス・ビジネス・スクールのリチャード・ペイン教授は、空売り禁止の実質的な影響は単に取引コストを上昇させ、出来高を減らすだけでしかないことが、研究結果から分かったと述べた。