株式空売り規制が世界的に再燃の動き 市場保護か不当介入か
乏しい相場への影響
ニューヨーク連銀が12年、空売りを08年終盤に事実上禁じられた400余りの米金融株の当時の14日間の値動きを調べたところでも、意図した効果は得られなかった。
これらの銘柄は平均で12%下落し、規制対象外だった非金融株の動きとほぼ変わらなかったのだ。一方金融株の取引コストは、平均よりも6億ドル以上増大したと推定されている。
連銀は「われわれの分析では、空売り禁止は株価にほとんど影響しなかった」と述べ、株価変動をもたらした具体的な原因は不明としつつも、市場の流動性が低下して取引コストが上がったと付け加えた。
ESMAが17年に示した分析でも、空売り禁止は株価に大きな影響を与えなかったことが判明した。
それでもESMAが「選別的な介入」を続ける決意は固い。例えば今年、不正会計疑惑が報じられた決済サービスのワイヤーカードの空売りをドイツ政府が2カ月禁止したことに関して「ドイツ金融市場への脅威に対処するための適切かつ相応な(措置)」と支持した。
不都合な真実
空売りは古くから行われている取引で、そもそも1600年代初めにさかのぼり、当時のオランダでは東インド会社の株価を支えるために当局が介入する場面もあった。
マディー・ウォーターズのブロック氏らは、空売りを禁止したり何らかの制限を加えようとするのは政治的なパフォーマンスの一環にすぎないと手厳しく切り捨てる。
同氏は、空売りを禁止するのは本当のところは「真実だが不快なニュース」を「フェイクニュース」と名付けて排除するようなものだと主張し、ドイツとフランスが空売り業者の調査を開始した後、両国で自らが構築している空売りポジションを公言しにくくなったとこぼした。
ドイツ、フランス、イタリアの検察は、空売り業者のワイヤーカードや仏小売り大手カジノなどに関する調査や投資を調べている。
中国企業への空売りで知られるダン・デービッド氏は、景気後退が到来すれば世界的にこうした動きが出てくるのではないかと懸念する。「この種の介入は長期的には絶対に機能しないが、政治面では短期的に必ず成功する」という。
トルコの空売り禁止は、同国経済の弱さの表れで依然として投資を敬遠したくなる、と語るのはヘッジファンドのミーナ・キャピタルを創設したKnaled Abdel Mjeed氏だ。
プラティナム・アセット・マネジメント創設者カール・ネルソン氏は、世界的に自由な取引の枠組みから離れていく動きが加速していて、その中に空売りを禁止する政府が増加することが含まれてもおかしくないとの見方を示した。
[ニューヨーク/ロンドン/イスタンブール ロイター]
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