年内に続々「発動期限」到来 トランプの関税措置
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米中両国は先週、貿易協議で部分的に合意した。結果として大半の分野は今後どうなるか分からないままだが、1つはっきりしたのは、米政府が予定していた2500億ドル相当の中国製品に対する関税率引き上げが見送られたことだ。写真はトランプ米大統領。ホワイトハウスで撮影(2019年 ロイター/Jonathan Ernst)
米中両国は先週、貿易協議で部分的に合意した。結果として大半の分野は今後どうなるか分からないままだが、1つはっきりしたのは、15日に米政府が予定していた2500億ドル相当の中国製品に対する関税率引き上げが見送られたことだ。
ただ米国がこれまでに打ち出した新たな関税措置の発動期限が年末までに続々と到来するため、米国はそれぞれ実行するか、延期するか、あるいは再交渉するかの判断を迫られている。既に米国の通商政策に痛めつけられている世界経済にとって、米政府の今後の対応次第ではさらなる悪影響を被る恐れも出てくる。
トランプ政権は過去3年間で、モノの取引だけに基づく貿易相手上位10カ国・地域全てに対して、さまざまな懲罰的関税を導入したり、長らく維持してきた協定の破棄、通商関係の見直しなどを行ってきた。
一部の専門家によると、こうした全面的な貿易戦争を開始したため、米通商代表部(USTR)は米国にとって最も深刻な問題、つまり中国の不公正な貿易慣行を抑え込むという仕事に集中できなくなっている。
かつてトランプ大統領の経済顧問を務め、現在は法律事務所エイキン・ガンプのパートナー、クリート・ウィレムズ氏は、米国は長年にわたって国際貿易に関する重大な問題に直面しており、何らかの形で打開する必要があるのは確かだが、全部同時に片づける必要はなかったと指摘。そんなことをしなければ、もっと中国への対応に力を注げただろうとの見方を示した。
今後の主な関税措置の発動期限や、貿易協定の議会審議日程は以下の通り。
10月18日 EU向け関税
早ければ18日に、米政府はプロボローネチーズやスコッチウイスキーなどのEU製品に25%の関税を課す可能性がある。航空機補助を巡り、世界貿易機関(WTO)が米国に約75億ドル相当の報復関税を導入する権利を認めたためだ。
この措置に基づくと、エアバスが欧州で組み立てた航空機にも10%の関税が適用される。業界関係者は、顧客と合意していた契約を取り消されないように同社がコストの少なくとも一部の引き受けを迫られそうだ、と話している。
フランスのルメール経済・財務相は今月、「もし米政府がフランスやEUが差し伸べた手を拒絶するなら、われわれは制裁という形で動く準備をしている」と語り、EUは対抗措置を講じる見込みだ。