中小証券会社、株式取引のアウトソース加速 低金利に悩む業界の新たな収益源に
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ゴールドマン・サックスの元トレーダー、ベンジャミン・アーノルド氏(37)の仕事は夜10時から始まる。写真はロンドンのノーザン・トラストのオフィス。1日撮影(2019年 ロイター/Toby Melville)
ゴールドマン・サックスの元トレーダー、ベンジャミン・アーノルド氏(37)の仕事は夜10時から始まる。米ユタ州に構えた小さなオフィスでアジアの株式取引を本格的に行う。ただし自己勘定ではなく、顧客になっているアジアの資産運用会社のために注文を出し、取引を執行しているのだ。
アーノルド氏はヘッジファンドや銀行で15年間働いた後、トレーディングを請け負う会社を立ち上げ、中小の資産運用会社から強まる一方の需要を取り込もうとするニッチ企業の一群に加わった。
同氏は「手をこまねいて世界の変化をただ見守るか、積極的に足を踏み入れてその変化の一員になるかを決める時期が来ている」と話した。
背景には、規制強化に伴う負担増や乏しい利益率、急速な技術発展を受けて多くの資産運用会社がコスト削減を迫られ、日々のトレーディングを外部の企業に任せようとしている流れがある。
トレーディングの外注需要は今年に入って加速。特に欧州連合(EU)が昨年、第2次金融商品市場指令(MiFID2)を導入したことで、資産運用業界は厄介な書類手続きが増え、窮地に陥っている。
ロイターが資産運用会社や銀行、証券会社などの幹部に取材したところでは、中小の資産運用会社にとって自前で2人のトレーダーを雇うよりも、トレーディングを外注する方が最大で40%もコストが少なくて済むという。
トレーディング部門立ち上げの支援や資産運用会社への規制関連の助言をしているエルゴ・コンサルタンシーのマイケル・ブロードベント氏は、今年は外注化への「巨大な移行」が見られると話す。
トレーディング外注ビジネスはまだ生まれたばかりだ。ただ専門家によると、ヘッジファンド運用者などの大手機関投資家向けに複雑な金融サービスを提供するプライムブローカレッジ業務では、最も成長著しいセグメントの1つになっている。
現在は約25社がトレーディング請負サービスを展開し、このうち少なくともウェルズ・ファーゴ、BTONファイナンシャル、そしてアーノルド氏のメラキ・グローバル・アドバイザーズなど4社は今年事業を開始した。数年前、こうしたサービスを行っていた企業はごく少数だった。
先月には中堅ブローカーのINTL FCストーンがプライムブローカレッジ業務強化に向けて、トレーディング請負会社フィルモア・アドバイザーズを買収した。
ノーザン・トラストやジェフリーズ・ファイナンシャル・グループといった一部の有力金融機関も、幅広い顧客のために社内にトレーディングを請け負う独自の外注チームを設置している。
これらのトレーディング請負部門は、資産運用会社などの「バイサイド」の投資家の実質的な手足として機能し、あらゆる分析作業や管理業務、法令順守などを代行する。顧客の注文を単に執行するだけの「セルサイド」のトレーディング事業とは全く内容は異なる。