中小証券会社、株式取引のアウトソース加速 低金利に悩む業界の新たな収益源に
拡大する市場
金融コンサルティング会社オピマスの調査では、資産額500億ドル超の資産運用会社の5社に1社は、2022年までにトレーディング部門の一部を外注化する見通しだ。外注ビジネスの世界全体の収入は年間4億5000万─5億ドルで、1年で20─30%増加すると予想される。
トレーディングをそれほど頻繁に手掛けなかったり、内部のチームを維持するコストに見合うだけの取引額がない中小の資産運用会社にとっては、外注化の魅力は高まる一方だ。
オピマスは、ある資産運用会社の株式トレーダーの年間取引額が15億ドル未満なら、外注化の方が安上がりになるとみている。
ノーザン・トラストに日々のトレーディングを完全に任せ、戦略的な問題に注力できるようにしているクラックス・アセット・マネジメントのカレン・ザカリー最高執行責任者(COO)は、この態勢を維持していくのが好ましいとの見方を示した。
複数の市場参加者やリサーチ部門の担当者によると、資産運用会社は一般的に外注化によって取引1件当たり約5ベーシスポイント(bp)の費用を支払うが、社内でトレーディングを行った場合の費用は8bp前後になる。また専門家の試算では、3人態勢のトレーディング部門の年間コストはおよそ150万ドルに上る。中小の資産運用会社が通常雇っているトレーダーは2、3人だ。それに加えて、規制当局への取引を報告したり、MiFID2を守るためのコストも負担しなければならない。
待望の収益源
銀行・証券業界では、トレーディング請負サービスを提供する動きは広がる一方だ。自分たちも規制に苦しめられ、慢性的な低金利の逆風にさらされている彼らにとっては、待望の収益源が登場した形だ。
グリニッチ・アソシエーツのシニアアナリスト、リチャード・ジョンソン氏は「セルサイドも独自の課題に直面している。固定費が増加し、手数料のプールは縮小しているからだ。この動きの中で、トレーディング外注は強力なニッチ(隙間)と手を出さずにはいられない価値ある事業を生み出した」と説明した。
ノーザン・トラストがトレーディング請負を始めたのはほぼ2年前で、現在は32社の顧客を抱える。機関投資家向けブローカレッジ責任者ゲーリー・ポーリン氏は、18人で構成する請負チームは昨年、1450億ドル相当の株式取引を行ったと述べた。トレーダー1人当たりでは80億ドル前後になる。
ジェフリーズのプライムブローカレッジ部門がトレーディング請負に乗り出したのは昨年6月で、共同責任者ジョン・ラウブ氏は現在の顧客が70社だと明かした。
ラウブ氏の話では、16年時点で新興の資産運用会社のうちトレーディングを外注していたのは全体の10%弱だったが、今は7割を超えている。
メラキのアーノルド氏は「トレーディング外注はまだ成長が始まったばかりの段階で、われわれのような企業を利用する資産運用会社はこれからどんどん増えていくと考えている」と語った。
(Thyagaraju Adinarayan記者、Helen Reid記者)
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