成長続くインドの高級チョコ市場 農村部の消費拡大で熱き戦い
サティッシュ・Pさんは、インド南部バンガロール近郊の小さな村ハロハリでパン屋を営んでいる。写真はキャドベリーのチョコレート。英マンチェスターで2010年1月撮影(2019年 ロイター/Phil Noble)
サティッシュ・Pさんは、インド南部バンガロール近郊の小さな村ハロハリでパン屋を営んでいる。彼は2年前、米食品大手のモンデリーズ・インターナショナルが製造するチョコレートバー「キャドベリー・シルク」を仕入れることに迷いがあった。
「キャドベリー・シルク」は1本70─170ルピー(110─270円)。サティッシュさんが長年扱ってきた小さなチョコレートはほんの5ルピーで、それに慣れた顧客にとってキャドベリーははいかにも高すぎるように思えた。だが彼は思いきって仕入れを決断。現在、「キャドベリー・シルク」の売上は月間3500ルピーにも達する。
「最近の村の住民は、高級チョコレートを買う余裕がある」と彼は言う。
サティッシュさんをはじめとするハロハリ村の商店主らが気づいたように、インドでのチョコレート消費量は急増している。それが可能になったのは、インド総人口の3分の2以上が暮らす65万カ所の比較的貧しい農村にも、可処分所得の拡大が広がったからだ。
ネット通販ブームと大幅な減税も売上高増大を後押ししていることから、モンデリーズや スイスの食品大手ネスレ、進出がやや遅れた米チョコレート大手ハーシーなど、グローバル規模の製菓企業が、まだ小規模とはいえ急速に拡大しつつあるインド市場への投資を加速している。
インドでの売上高で首位に立つモンデリーズ(本社米イリノイ州)は、ロイターに対し、世界全体での今年の投資額は5年ぶりに1億5000万ドル(約163億円)の増加に転じたが、「その大部分」はインドの農村部向けになると明かした。
モンデリーズは2000年代初め、インドの商店主らにまず冷蔵陳列ケースを無料で提供し、昨年農村地域への流通ルートを拡大した。2018年の時点で5万カ所の農村に商品を供給していたが、今後3年間で約7万5000─10万ヶ所に拡大する計画である。
モンデリーズでは、この目標に向けて冷蔵配送トラックの台数を増やし、インドの小規模小売店を網羅するデータベースを構築。そうした店舗における自社商品の販売状況をモニターしている。
モンデリーズのインド担当マネージング・ディレクターであるディーパク・アイヤーは、「農村地域の消費者は貧しいという誤解がある。皆が貧しいわけではない。富裕な農家もあり、消費階級になりつつある」とロイターに語った。
アイヤー氏によれば、モンデリーズでは最小で人口3000人程度の農村までターゲットにしているという。「最近では、モバイル接続のインターネットで商品を目にして、高級チョコレートを欲しがる家庭もある」