MRJで納期7年遅れた三菱重工、ボンバルの小型機事業買収で巻き返しなるか
三菱重工業は、カナダの航空機・鉄道車両大手ボンバルディアから小型ジェット旅客機「CRJ」事業を買収することで合意した。写真は18日、パリの航空ショー会場でスペースジェットを背に取材に応じる三菱航空機のアレックス・ベラミー最高開発責任者(2019年 ロイター/Pascal Rossignol)
三菱重工業は25日、カナダの航空機・鉄道車両大手ボンバルディアから小型ジェット旅客機「CRJ」事業を買収することで合意した。ボンバルディアが持つ保守管理サービス網と世界的な顧客基盤を活用し、なかなか進まなかった小型ジェット市場における基盤確保に向けて取り組みを加速させる狙いだ。
MRJ(三菱リージョナルジェット)という名で始まった日本勢として50年ぶりに旅客機市場に復帰するという一大事業は、納期が当初計画から7年も遅れるなど壁にぶつかっている。ただボンバルディアが市場から撤退したことで、三菱に再びチャンスが巡ってきた。
先週のパリ国際航空ショーでは、三菱重工子会社の三菱航空機がMRJから名称を「スペースジェット」に変更するとともに設計を手直しした新たな機種(65─88席)をお披露目し、搭乗客が頭上の荷物入れにキャリーバッグを入れられるようになる天井の高い客室などをアピール。その際に同社最高開発責任者でボンバルディアの元幹部でもあるアレックス・ベラミー氏はロイターに「市場参入に際して最も手ごわい障壁の1つは、顧客との関係づくりとそれを維持するためのサポート態勢を築くことだ。(メーカーが)成功するか失敗するかは、製品サポートにかかっているとわれわれは承知している」と語った。
特に1日に最大で10回飛行するような最も消耗を強いられる小型ジェット機においては、こうしたサポート力の重要性が物を言う。
ボンバルディアは、コスト面の負担に耐えられずに市場からの撤退を余儀なくされた。スペースジェットよりはやや規模が大きいボンバルディアの110─130席の「Cシリーズ」は設計面で称賛を浴びたが、本格的に商用化したのは、それを1ドルで取得して「A220」に改称した欧州エアバスだった。
そしてボンバルディアは今回、CRJ事業を三菱に売り渡して小型旅客機市場から完全に手を引くことになる。
三菱も小型機開発は大幅な予算オーバーだが、ある業界筋は「日本勢はより長くゲームを続けることができた。三菱はボンバルディアよりも資金が潤沢だ」と説明した。