巨額負債から回復するも高くついたゴーン流経営 日産に残された身勝手と不正のツケ
見えない全容、続く内部調査
ゴーン氏をめぐる資金の流れについて、社内調査による解明に時間がかかったのはなぜか。調査に詳しい関係筋は、ゴーン前会長が信頼を置く補佐役に文書ではなく口頭で希望を伝える習慣があったため、と説明する。また、多くの支払いは「CEOリザーブ」と呼ばれる予備費を使ったり、最高財務責任者(CFO)や外部監査役の審査を必要としない非連結子会社を通じて行われたという。
関係者によると、ゴーン氏が日産の販売代理店を務めるオマーンの実業家スハイル・バハワン氏の会社に、CEOリザーブ経由で3000万ドル以上を送金するよう指示した問題や、個人的な負債の返済にこの資金が使われたかどうかも内部調査の大きな焦点の一つだ。
およそ9年間にわたって支払われたこの資金をめぐっても、日産とゴーン氏側の主張は大きく対立している。
前会長の広報担当は、日産販売代理店としての大きな実績に対する報奨金だと説明。さらに、このようなディーラーへの奨励金はCEOの指示で支払われるものではなく、ゴーン前会長個人の負債の返済には使われていないと付け加えた。
しかし、日産の関係筋の1人は、販売代理店への報奨金は毎年計画されたイベントで、CEO予備費を使って支払われるものではないと反論している。バハワン氏の広報担当者にコメントを求めたが、回答は得られなかった。
さらに、日産の内部調査では、ゴーン氏が子会社を通じて仏パリ、レバノン・ベイルート、ブラジル・リオデジャネイロの高級住宅の購入費用を日産側に負担させていた問題や、同氏の姉に支払われた実態のないアドバイザー業務に対する報酬も解明の対象となっている。
ロイターが閲覧した文書によると、ゴーン前会長の姉への支払いは2003年にさかのぼり、2016年までに総額70万ドルに達した。
これに対し、西川CEOやナダ氏ら日産幹部らは住宅の提供を認識しており、了承していた、とゴーン前会長の広報担当者は反論する。ゴーン前会長の姉の代理人でもある同担当者は、適切な人物が姉との契約を承認したと述べ、前会長に反対する幹部らが事実無根の情報で前会長の家族を攻撃していると批判している。
およそ20年に及んだカリスマ経営の負の遺産をどう清算するか。ゴーン氏の逮捕・起訴を機に、日産ではこれまで封じ込められてきた様々な事案について内部告発が後を絶たず、疑惑の解明に向けた新たな手掛かりを探る動きが今も続いているという。
(白水徳彦 編集:北松克朗、石黒里絵)
2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら