巨額負債から回復するも高くついたゴーン流経営 日産に残された身勝手と不正のツケ
経営陣は反発せず
こうした日産側の見方に対し、 ゴーン前会長の広報担当者は、ホーバーのために介入してはおらず、提携に関する決定はすべて執行委員会が下した、と説明している。
さらに同氏側は「根拠のない非難や特定の日産幹部による絶え間ないリークは、ゴーン氏の評判を汚すだけでなく、(仏ルノーとの)アライアンスの力関係を揺るがして白紙に戻し、日産の憂慮すべき業績から目をそらさせるための明白で恥ずべき試みだ」(広報担当)との厳しい批判声明を出した。
ホーバー創業者であるマンガルジ氏の代理人も、ホーバーには豊富な経験を持つ専門家が勤務していたとし、「ホーバーはゴーン氏や他の誰からも特別待遇を受けたとは一度も認識していない」とし、便宜供与の存在を強く否定している。
それから5年後、2012年にインドの日産ディーラーが販売不振について幹部らに抗議し始めた時も、ゴーン氏はホーバーを支持し続けた。抗議の声は勢いを増し、13年には日産のインドのディーラーを代表する複数のグループが日産幹部らに書簡を送り、事態収拾への介入を訴える事態となった。日産は翌年、ホーバーとのパートナー契約の打ち切りに踏み切った。
ロイターは、ホーバー選定に関する意思決定の一部をまとめた日産の内部文書も確認した。
ゴーン氏の行動に他の経営陣は歯止めをかけることができなかったのか。関係筋によると、ゴーン前会長が機関決定を覆すような形でホーバーを推した件のほか、社内で問題視する声もあった中東の販売代理店に関する別の事項についても、日産の意思決定機関のひとつであるエグゼクティブ・コミッティをはじめ、経営陣の反発はほとんどなかったという。
「いろいろな意味で、ゴーン氏の言ったことに疑問をはさむ必要はないという暗黙の了解があった。それは彼が下したほぼ全ての決定に当てはまる」。関係筋の一人は日産社内でゴーン氏の独断を抑える機能が働いていなかったことを認めた。