最新記事

日本企業

巨額負債から回復するも高くついたゴーン流経営 日産に残された身勝手と不正のツケ

2019年3月21日(木)17時21分

経営陣は反発せず

こうした日産側の見方に対し、 ゴーン前会長の広報担当者は、ホーバーのために介入してはおらず、提携に関する決定はすべて執行委員会が下した、と説明している。

さらに同氏側は「根拠のない非難や特定の日産幹部による絶え間ないリークは、ゴーン氏の評判を汚すだけでなく、(仏ルノーとの)アライアンスの力関係を揺るがして白紙に戻し、日産の憂慮すべき業績から目をそらさせるための明白で恥ずべき試みだ」(広報担当)との厳しい批判声明を出した。

ホーバー創業者であるマンガルジ氏の代理人も、ホーバーには豊富な経験を持つ専門家が勤務していたとし、「ホーバーはゴーン氏や他の誰からも特別待遇を受けたとは一度も認識していない」とし、便宜供与の存在を強く否定している。

それから5年後、2012年にインドの日産ディーラーが販売不振について幹部らに抗議し始めた時も、ゴーン氏はホーバーを支持し続けた。抗議の声は勢いを増し、13年には日産のインドのディーラーを代表する複数のグループが日産幹部らに書簡を送り、事態収拾への介入を訴える事態となった。日産は翌年、ホーバーとのパートナー契約の打ち切りに踏み切った。

ロイターは、ホーバー選定に関する意思決定の一部をまとめた日産の内部文書も確認した。

ゴーン氏の行動に他の経営陣は歯止めをかけることができなかったのか。関係筋によると、ゴーン前会長が機関決定を覆すような形でホーバーを推した件のほか、社内で問題視する声もあった中東の販売代理店に関する別の事項についても、日産の意思決定機関のひとつであるエグゼクティブ・コミッティをはじめ、経営陣の反発はほとんどなかったという。

「いろいろな意味で、ゴーン氏の言ったことに疑問をはさむ必要はないという暗黙の了解があった。それは彼が下したほぼ全ての決定に当てはまる」。関係筋の一人は日産社内でゴーン氏の独断を抑える機能が働いていなかったことを認めた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中