アジア発「スキンケアする男」に熱視線 シャネルなど大手ブランドも参戦
男性化粧品が新たに生まれ変わろうとしている。都内で9月撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)
ジッポライターのように親指だけで開閉ができるアイシャドーから、淡い青味がかったグレーのパッケージの薄付きファンデーションまで、男性化粧品が新たに生まれ変わろうとしている。
化粧品メーカー各社は男性化粧品をもっとメジャーなものにしようと本腰を入れ始めた。
仏シャネルや日本のポーラ・オルビスホールディングスなどは、男性化粧品の需要が特にアジアで高まっているのを機に新しいラインを発売し、これまでずっと不調だった同部門がようやく上向くことを期待している。
芸能界や限られた美容ブロガーの世界以外にも、メーカーがターゲットとしている男性化粧品ブランドの顧客はいる。例えば、イメージを大切にする企業経営者などだ。ブランド側も、「化粧していることが目立たない」という一部の製品の特長を強調している。
清潔感を出すことはビジネススキルの1つとなりつつあると、ポーラ・オルビス傘下のACRO代表取締役社長の御後章氏は言う。同社は9月、男性化粧品ラインを発売した。その中には、「クリスピン」や「ホアキン」という名が1つ1つに付けられた15種類のスキントーンが選べるファンデーションも含まれる。
韓国では、Kポップ男性アイドルグループが人気で、彼らのキュートで非の打ちどころのないルックスは、魅力的な男性像を再定義するのに一役買っている。同国などでの需要の高まりは、これまでニッチ市場だった男性化粧品が成長する可能性を示している。
ファッションデザイナーとして自身の会社を経営しているリ・ホジュンさん(28)は、眉を描いたりする一部の知人とは違い、フルメークはしたくないが、BBクリームのような薄付きの保湿剤の使用は当たり前となっており、男性コスメのコーナーが拡大しているコスメショップを訪れていると話す。
「男なので、コスメショップに入るのは恥ずかしく、変な感じがしていた。でも今では、ためらいなく入れる」と、ホジュンさんは女友だちと首都ソウルの街を歩きながら語った。
市場調査会社ユーロモニターのデータによると、アジアの男性化粧品市場は依然小さく、2017年は世界全体の市場規模495億ドル(約5.5兆円)の5分の1にも満たなかった。
しかし他の市場がシェービングやデオドラント製品が中心であるのに対し、アジアはすでに急成長分野のスキンケア製品が売れ筋で、世界売上高の6割以上を占めている。
男性の必需品
大半の化粧品メーカーは、男性化粧品に対してせいぜい試験的に販売しているだけだ。
だが、男性用ファンデーションを75ドルで販売するシャネルなどの新規参入者は、コスメが洗練されるにつれ、男性たちの見る目も厳しくなると主張する。例えば、大きな毛穴を隠すために特別な質感を求めるようになると。
香水やファッションで有名なシャネルは、「ボーイ・ドゥ・シャネル」という新しい男性メークアップラインの中でマットな質感のリップバームやグレーの眉ペンシルを発売している。
「男性の特定の需要にターゲットを絞ることは、新たな使用方法や多様な使い方のできる新製品や新しいフォーマットの開発において、業界全体を真の革新へと導くだろう」とシャネルはメールでコメントした。