「爆買い」の火は消えるか?
ある店舗でマグカップやベッド用のシーツを物色していた30歳の女性Zhengさんは、「物価上昇に収入が追いつかないようだ」と不安を口にする。「こういうものは必要ない。もう少し自制して、買い物にも頻繁に行かないようしなければ」と語った。
さらに厳しい打撃を受けるのは、中国で増大しつつある高齢者層かもしれない。医療費が可処分所得に食い込みつつあるからだ。
すでに退職した55歳の女性は、ロイターの取材に対し、自分のお金の大半は都市部の大気汚染対策用のエアフィルターに使わざるを得なかったと語る。「病気になって病院に行く必要が生じたときのために、貯金しておきたいのだけど」と言う。
中国国内に多数存在する小規模な小売店経営者は、彼ら自身も消費者だが、完全に国内需要に依存して生計を立てているだけに、厳しい状況に置かれている。
上海で携帯電話ショップを経営するDongさんは、昨年下半期に売上が急激に落ちたという。「奇妙な話で、理由は分からない。株式市場が暴落したからかもしれない。2016年はもっと悪くなると思う」と話す。
逆風
エコノミストは、今年、賃金が伸びず失業率が上昇すれば、消費者の支出は低下すると警告するが、そうなる可能性は高そうだ。
また、最近の人民元安によって中国で販売されている多くの輸入品価格にその影響が及んでおり、中国人の購買力が内外で低下することも考えられる。
「賃金上昇が緩やかになることで、今年は消費支出の伸びが抑えられると予想している。さらに、産業の不振が消費に及ぼす悪影響が強まるリスクも残っている」と、オックスフォード・エコノミクスのアジア経済担当責任者ルイス・クイジス氏(香港在勤)は分析する。
中国の国家統計局によれば、GDP成長に対する消費の貢献比率は、昨年15ポイント上昇して3分の2を超え、巨大な製造部門の減速を相殺することに貢献した。もっとも、そのうち民間消費ではなく政府支出によるものがどの程度あるのか、公式の内訳は発表されていない。