オバマと習は中国経済を語らず
ほぼコスト度外視で国有企業への依存度の高い経済を持続させようとする指導部の姿勢(国有企業に頼ることへの依存症状態と言ってもいいだろう)を、中国の国民は次第に受け入れ難いと感じ始めている。
国有企業が非効率で競争力を欠いていることは、国民もよく分かっている。4大国有銀行が国有企業に「融資」を行い、その「返済」のために国有企業がさらに金を借りるという図式も、共産党や政府の幹部の汚職と無駄遣いが蔓延していることも、国民は知っている。
この問題は、中国の政治と経済の骨組みに深刻な亀裂を生じさせる恐れがある最大のリスク要因だ。国内の社会不安にもつながりかねない。
それは、中国指導部にとって、そして世界全体にとっても最悪の悪夢だ。中国社会が不安定化すれば、世界経済に及ぶ悪影響の大きさは、中国当局による通貨の切り下げや株式市場の混乱とは比べものにならない。
中国経済が抱える問題を解決するために改革を実行することは、習にとって到底簡単なことではない。ほかの誰がリーダーだったとしても、それは極めて難しい課題だ。
改革を成し遂げようと思えば、改革開放路線が導入されて以来、四半世紀以上かけて形作られてきた強力な既得権益の岩盤を解体しなくてはならない。習は、自らが中国経済の運命を決める力を持っているとアピールしたいようだが、現実がそんなに簡単でないことは本人がよく分かっているだろう。習はそういう難しい側面についてもっと語るべきだ。
今回のオバマと習の首脳会談は、そのための絶好の機会になり得たはずなのだが。
[2015年10月13日号掲載]