HBS教授が教える、「使える部下」の育て方(後編)
"正しい疑問"を活用すれば「優秀な部下がいない」と言い訳することもなくなる
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ゴールドマン・サックスに22年間勤務し、副会長まで務め上げた後、ハーバード・ビジネススクール(HBS)教授に。そんな輝かしいキャリアを持つロバート・スティーヴン・カプランによれば、「卓越したリーダーシップを発揮するのに、すべての問いの答えを知っている必要はない」。
うまくいくリーダーと、うまくいかないリーダーの違いは何か。どんなリーダーでも例外なく、自信とやる気をなくす時期を経験する。違いが表れるのは、そうしたときに"正しい疑問"を持てるか否かだと、カプランは言う。
カプランの新刊『ハーバードの"正しい疑問"を持つ技術 成果を上げるリーダーの習慣』(福井久美子訳、CCCメディアハウス)は、ビジョンの描き方から、フィードバックの活用法、迷走した組織の立て直し方まで、大小を問わず組織を率いる人に"正しい疑問"という武器を授けてくれる1冊。
ここでは、「第4章 部下を育てる技術――後継者を育成する」から一部を抜粋し、前後半に分けて掲載する。
『ハーバードの"正しい疑問"を持つ技術
――成果を上げるリーダーの習慣』
ロバート・スティーヴン・カプラン 著
福井久美子 訳
CCCメディアハウス
※HBS教授が教える、「使える部下」の育て方:前編はこちら
優秀な人材の不足に悩んでいた、ある大手企業の部長の話を紹介しましょう。彼女は、直属の部下たちが能力不足で重要な仕事を任せられないために、時間を最大限に有効活用できずに悩んでいました。さらに彼女は、社内に優秀な人材がいないせいで、新商品の開発やマーケティング活動に支障が生じていると考えていました。彼女に「補欠リスト」を見せてもらったところ、自分の部下全員と、さらに彼らの部下の名前が、詳細な説明つきで列挙されていました。私はその名前を確認しながら「何人かの管理職にもっと多くの権限を与えられませんか?」と訊ねました。彼女は彼らをほめながらも、誰に対してもあいまいな態度を取りました。
こうしたやり取りをしていた三か月間で、候補に挙がっていた二人の部下が会社を辞めました。二人とも、ライバル企業からもっと責任の重いポストを提示されたのです。どちらの場合も、部長はCEOの助けを借りて彼らを引き止めようとしました。もっとリーダーシップを発揮できる仕事を任せるからと説得しようとしたのです。しかし、残念ながらどちらの部下も彼女を信じませんでした。彼らは入社以来一度も、重責を担うための教育もコーチングも受けたことがなく、一一時間かけて説得されても不信感をぬぐえずにいました。結局、二人とも会社を去っていきました。
二人が辞職した後、部長はうちひしがれ、CEOも「きみには、優秀な人材を採用する力量も、会社に定着させる力量も足りないのかもしれないね」と彼女を不安視する発言を口にしました。要するに、すでに難しかった状況がさらに難しくなったのです。そのショックから、この部長はアドバイスを求め、積極的に内省し分析しました。私たちがこの出来事について話し合っていると、彼女は、二人が辞める前から、彼らばかりではなく誰も有望なリーダーとして見ていなかったことに気づきました。その結果、彼らの権限を拡大することも、コーチングの時間を増やすこともしませんでした。毎日いろいろなことが起きますし、ビジネスの景況をチェックするのにも忙しくて、彼らをもっと良く知ろうとも、彼らの能力をきちんと評価しようともしませんでした。今や彼女は、この二人の能力を過小評価していたことに気づきました――さらには、部内の他の社員の能力も過小評価していたであろうことも。