HBS教授が教える、「使える部下」の育て方(後編)
私は彼女に、まずは落ち着いて、部内のスター候補をリストアップするよう勧めました。それから彼女は時間を作って彼らと個別に面談するようになりました。面談の前には、彼らの人事ファイルを出して、彼らのこれまでの査定結果、業務履歴、背景などに目を通しました。個別面談では、質問をして、彼らの今の状況を確認しつつ、どんな仕事をしたいか、目標は何かなどを訊ねました。
こうした努力の末、彼女は各社員のためにキャリアプランや業務プランを立てました。そしてこのプランを使って、部内の管理職の後継者育成計画の草案を練りました。このプロセスに熱心に取り組む一方で、もっと早くに計画を練らなかったことを後悔しました。しかし明るい話題もあります。後に、彼女が後継者育成計画をCEOに見せたところ、CEOは感銘を受けて、この方法を全社に導入しようと提案してくれたのです。
後継者育成計画を練る
大抵の場合、組織のなかには金の卵がいます。なかには、まだ能力が開花していない人もいるでしょう。金の卵を見つけ、能力を評価し、彼らの能力に合った仕事を見つけるには、緻密な後継者育成計画があると便利でしょう。まずは、たくさんの問いに答えて、解決策を絞り込みます。最初の質問です。「私の後を継げる社員はいるか?」答えがノーであれば、次はこの問いです。「将来私の後を継いでくれる優秀な人材を採用するには、ヘッドハンターに社外の人を紹介してもらうべきだろうか?」
一番目の質問の答えがイエスのとき、すなわち後継者候補がいるときは、この質問です。「彼らの夢や彼らの性格や特徴を理解していると言えるほど、彼らと話しているだろうか?」「能力のある社員になるべく権限を委譲するようにし、彼らにもっと期待をかけ、もっと厳しく指導するべきだろうか? そうすれば、彼らの成長を促しつつ、彼らの能力を試すことができるのではないか?」「候補者を主要な業務のうちの第一段階のポストに就かせて、彼らのスキルを伸ばすべきか?」
これを実践すれば、あなたの部下だけでなく、あなたの仕事も向上するでしょう。業務内容をはっきりとわかりやすく伝えれば、部下たちは最優先タスクを完璧にやってくれるでしょう。こうして部下のレベルを引き上げると、自然に自分のレベルも上がります。というのも、優秀な生徒からは多くのことを学べるからです。
社内にあなたの後継者になれそうな社員が二、三人見つかったとしましょう。その場合は、本人に後継者だと知らせる必要はありません。計画に従って、彼らに責任ある仕事を与え、コーチングを増やせば、有望な若手社員たちはますます会社に貢献するようになり、モチベーションも上がります。彼らが全力を尽くせば、あなたも格段に仕事がやりやすくなるでしょう。