ルーブル危機でロシア経済はもう手遅れ
危機回避にはウクライナ問題で譲歩して欧米の制裁を解除してもらうしかない
窮地へ 原油安とルーブル危機と経済制裁のトリプルパンチで追い込まれたプーチン Reuters
ロシアが寒くて長く、経済もガタガタの冬を迎えている。
欧米の経済制裁と原油安でロシアの通貨ルーブルが暴落を続けるなか、ロシア中央銀行は16日の午前1時、政策金利を10.5%から17%に大幅に引き上げると発表した。ほとんど破れかぶれの決定だ。
原油輸出に外貨収入を依存するロシアはすでにリセッション(景気後退)に向かって暴走を始めている。そして1998年のデフォルト(債務不履行)以来で最大の金利引き上げは、ロシアにさらなる混迷をもたらすだろう。利上げの狙いは、投資家がロシアから資金を引き揚げるのを食い止めることだった。ロシアの銀行に金を残すのは17%もの利息が受け取れるのだから「うまい話」になるはずだった。
しかしそうはならなかった。金利引き上げ後も、ルーブルの暴落は続いている。16日は市場明けから一時35%下落し、1ドル=80ルーブルにまで下がった。その後は少し値を戻したが、16日の終値は1ドル=68ルーブルで危機的な状態から脱していない。
ルーブル暴落が引き起こす問題は、いくつかある。1つには輸入品が高騰し、インフレを起こすことだ。ロシアは食料品を輸入に大きく依存しているので、一般国民にとっては特に大きな問題だ。同時に、ロシアの企業や金融機関がドル建ての債務を返済することが困難になる。ルーブルが下落すれば、その分債務は膨らみ、デフォルトの危険は増す。
ルーブル暴落を止めようにも、ロシアには利上げ以外の選択肢がない。傷口を止血する応急処置として、外貨準備を活用することはできるが、それもすぐに底をつくだろう。何より、根本的な問題の解決にはならない。
ルーブルが暴落しているのは、原油価格が下がっているからだ。原油安がロシア経済を苦しめている。石油とガスで税収の半分を賄う政府にとっては悪夢だ。そして輸出品の価値が下がれば、通貨ルーブルの価値も下がる。