最新記事

中国経済

ウイグル高速鉄道めぐる中国の深謀遠慮

発展から取り残された自治区との距離を縮める高速鉄道は、政府を悩ますテロ問題を解決に導けるか

2014年6月11日(水)17時48分
ミシェル・フロクルス

超特急 新しい第二複線は乗客輸送専門となり、旧線は貨物専門となる Jason Lee-Reuters

 かつて中国内陸部の奥深く、新疆ウイグル自治区に行く手段は限られており、大変な苦労を覚悟しなければならなかった。しかしこのほど試運転に成功した高速鉄道「蘭新線第二複線(新疆区間)」が開通すれば、自治区の首府ウルムチと北京など他都市との行き来にかかる時間は大幅に短縮される。

 中国共産党機関紙の人民日報によれば6月3日、ウルムチと自治区内の別の都市である鄯善の間を試験車が問題なく走行したという。試運転の成功によって鉄道整備は順調に進んでいることが示されたが、政府は甘粛省の蘭州までを結ぶ全区画の今年中の開通を目指している。

 政府は新疆ウイグル自治区に限らず、中国全土に鉄道網を発展させるという大きな構想をもっている。新疆区間が開通して既存の鉄道網と連結すれば、これまでにないスピードで沿岸部の大都市にアクセスできるようになる。

 この鉄道の設計上の時速は250キロ。ウイグル情報を専門とするブログ「ファーウェスト・チャイナ」によれば、ウルムチと北京の間をわずか12時間で走り、現在は40〜45時間ほどかかる上海へも20時間以内に到着するようになるという。

 新路線建設に投じられた資金は230億ドル。全長1776キロにも及ぶ全区画が運行を開始すれば、世界最長の高速鉄道路線となる。

 近頃の中国では、新疆ウイグル自治区の独立を目指すウイグル族によるものとされるテロが頻発しており、習近平(シー・チンピン)国家主席にとって自治区と中国全土の治安回復は最優先課題だ。ウイグル族が人口の大多数を占める自治区はこれまで発展から取り残されてきたが、そこに長期的な安定をもたらすことが問題解決につながると政府は考えている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

金現物、3200ドル突破し最高値 米中貿易摩擦で安

ビジネス

米側が希望なら為替含め議論、訪米時期まだ決まってな

ビジネス

米バークシャーの円債が条件決定、総額900億円は過

ワールド

米大統領、大手法律事務所に通商交渉での「無償」支援
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税大戦争
特集:トランプ関税大戦争
2025年4月15日号(4/ 8発売)

同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 3
    「やっぱり忘れてなかった」6カ月ぶりの再会に、犬が見せた「全力のよろこび」に反響
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 6
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 7
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 8
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 9
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 10
    右にも左にもロシア機...米ステルス戦闘機コックピッ…
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 7
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 8
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 9
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 10
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描か…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 3
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中