最新記事

ネット

ゾンビと化した落日のヤフー

ポータルに固執し、検索ではグーグルに負けSNSではフェースブックに敗北。マイクロソフトに買われておけばよかった?

2011年10月6日(木)15時08分
ファハド・マンジュー

断末魔? かつての栄光はポータル時代の終焉とともに消えうせた Robert Galbraith-Reuters

 09年1月にキャロル・バーツがCEOに就任したとき、米ヤフーは低迷の一途をたどっていた。グーグルやソーシャルネットワークの巨人がウェブを牛耳る時代が迫り来るなか、かつての優良企業はあえいでいた。

 先週バーツの解任を発表したヤフーは、いまだに墓場をさまよっている。バーツは2年半の間に経費削減と組織改革を進めてきた。人気はあっても収益性の低いサイトを次々に閉鎖し、従業員を数千人削減した。

 バーツの正当性は数字が証明している。CEO就任から1年で総収入は43%増。2年目は105%の増収となった。

 バーツの就任時、調査会社コムスコアによる人気サイト上位50の集計で、ヤフーのサイトの総合点はグーグルより低かった。そして2年後の今、ヤフーはグーグルをリードしている。

 しかし求人サイト「グラスドア・ドットコム」の「従業員が匿名で経営陣を評価するコーナー」で、バーツのリーダーシップを支持する従業員はわずか33%。経営陣にはヤフーのあるべき姿についてビジョンがないという投稿も多かった。

 バーツはヤフーの抱える問題の半分を解決したが、ヤフーを再び盛り立てるという残り半分は手に負えなかった。その意味では更迭も当然だろう。

 もっとも、ヤフーのあるべき姿を描くことは、誰がこの会社の先頭に立とうがとてつもない難題だ。ヤフーは今も人気サイトだが、もはや人々の生活の中心ではあり得ない。

 遠い昔にヤフーが絶大な力を誇ったのは、1日に何度もヤフーのサイトを訪れる理由があったから。ヤフーはウェブを組織化した最初のサイトであり、あちこちのぞきたくなる仕掛けを次々に追加して、最初の「利益が出るサイト」になった。

 どこかのサイトへ行くためにヤフーを経由するついでに、ウェブメールや株価、ニュース、天気予報、星占い、求人広告、映像などをチェックする。これは初期のポータル戦略だった。

 しかしグーグルの登場で、ポータルサイトは時代遅れとなった。検索エンジンを使えばどのサイトにも数秒で行ける。

 ここ数年、ヤフーは次の展開を模索してきた。検索エンジンではグーグルに敗北。SNSではマイスペースとフェースブックに負けた(06年にヤフーはフェースブックに10億㌦で買収を持ち掛けて断られた)。目玉となる仕掛けを求めて多くの新興企業を買収したが、驚くような成果はなかった。

 結局、ヤフーは空洞化したポータルサイトに固執して、ウェブ界のゾンビになった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、ガザ軍事作戦拡大 国連診療所などへの攻

ワールド

マスク氏、近く政権離脱か トランプ氏が側近に明かす

ビジネス

欧州のインフレ低下、米関税措置で妨げられず=仏中銀

ワールド

米NSC報道官、ウォルツ補佐官を擁護 公務でのGメ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 9
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 10
    トランプ政権でついに「内ゲバ」が始まる...シグナル…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中