オバマは中国「為替操作」を非難できない
FRBの量的緩和策第2弾(QE2)は中国の人民元抑制策と同じ「ドル安政策」だと世界から怒りの声が
火気厳禁 アメリカの政策はドルで火遊びをするようなもの
韓国のソウルで11〜12日にかけて開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)において、中国の人民元の為替レートの問題は大きな議題だ。
この会議では、中国や韓国のような「モノを作る国々」とアメリカのような主に「モノを買う国々」の間の貿易不均衡を解決する方策を見つけることが主要なテーマとなっている。
アメリカに言わせれば、世界の貿易市場を公平な競争の場とするためには、世界第2の輸出大国である中国が為替操作をやめることがカギとなる。アメリカの連邦議員の一部からは、もし中国が人民元安誘導をやめないようなら関税で対抗すべきだとの声も上がっている。
バラク・オバマ米大統領でさえ、中国に対する当てこすりとも取れる発言をしている。
「一部の国々が大幅な貿易黒字を、そして他の国々が大幅な貿易赤字を抱えたままで、為替に関しても(経済を)バランスの取れた成長パターンに導くような対応が一切なされていない――そんな状況を受け入れ続けることはできない」と、オバマはインドで記者たちを前に語った。
確かにこうした考え方にも一理ある。中国は人民元レートを人為的に低く抑えており、そのせいで中国製品の価格はアメリカやヨーロッパでは割安になっている。逆にアメリカの製品は中国では割高になっており、アメリカの当局者によれば、これが中国でアメリカ産品が売れない原因の1つだ。
中間選挙で共和党が下院の過半数を占め、米経済が低迷を続ける中、中国の為替操作に対して強い態度に出るべきだというオバマへの圧力は今まで以上に強まっている。だがオバマは自分がよその国のことを悪く言えた立場ではないことに気づくかもしれない。
輸出増を狙った「奇手」か
ドイツのウォルフガング・ショイブレ財務相やブラジルのジルマ・ルセフ次期大統領といった一部の外国の指導者からは「アメリカも為替操作をしている」と指摘する声が上がっている。
11月3日、米連邦準備制度理事会(FRB)は景気刺激策として今後8カ月間に6000億ドル分の米長期国債を金融機関から買い取り、市場に大量の資金を供給するという追加の量的金融緩和策を発表した。リーマンショック以降、FRBは既に約1兆7000億ドルを市場に供給している。
ベン・バーナンキFRB議長は、この措置は銀行からの融資を促して経済成長の起爆剤にするためのものだと述べている。だが世界のほとんどの国は、ドル安を誘導しアメリカの輸出を拡大しようとするための見え透いた試みだと受け止めている。
世界各国の指導者からは、アメリカと中国は同じ穴のムジナだという声が上がっている。「中国が為替レートを操作していると非難しておきながら、紙幣の増刷によってドルの為替レートを人為的に引き下げようとするなど、アメリカのやることは矛盾している」と、ドイツのショイブレ蔵相はシュピーゲル誌に語った。
ロシアもブラジルも、そしてもちろん中国も、アメリカの「偽善的行為」を批判している。「アメリカのやっていることは、多くの国々の目にはドル安操作だと映っている」と、カーネギー国際平和財団のウリ・ダドゥシュ上級研究員は語る。
アメリカがドル安を望む理由は、基本的には中国が人民元安を望む理由と同じだとダドゥシュは言う。ドル安になれば他の国々は前よりも安い価格でアメリカの製品を輸入できるようになる。オバマも5年以内にアメリカの輸出を倍増させたいと語ったことがある。
「ドル安はアメリカの輸出増に一役買うかもしれない。そして新興諸国は(今回の追加緩和の理由は)まさにそれだと考えている」とダドゥシュは言う。