オバマは中国「為替操作」を非難できない
安易な比較は間違っている?
だが多くのエコノミストは、今回のFRBの施策と他の国々の為替操作は一概に比べられないと考えている。「比較なんてとんでもない」と、ピーターソン国際経済研究所のジョゼフ・ギャノン上級研究員(元FRB金融政策副局長)は本誌に語った。
「アメリカは自国の景気を刺激しようとしているのであり、ドル安は意図しない副作用だ。(一方で)中国とブラジルは故意に自国通貨の為替レートを引き下げている。まさに通貨戦争をやっているのだ」
ドル安が意図的なものか否かはとにかく、発展途上国はドル安によって自分たちの国の製品がアメリカで売れなくなるのではないかと懸念している。
また中国やブラジルのような新興国はドル資金が大量に自国の金融市場に流れ込み、住宅バブルを引き起こすのではとの懸念も抱いていると、コーネル大学のエスワル・プラサド教授は言う。
金融機関は追加緩和で新たに市場に流れ込んだドルの運用先を探しており、新興国の不動産が標的になる可能性もある。「FRBの政策がアメリカを救うかどうかはとにかく、世界中の他の国々に大きなリスクをもたらしているのは確かだ」とプラサドは語る。
オバマは為替問題で強い態度に出る前に、他の国々の懸念を重く受け止めたほうがいいかも知れない。「みんな冷静になるべきだ。目下のところ政治家たちは貿易戦争をしろと言っているようなものだ」と、外交評議会のジャグディシュ・バグワティ上級研究員は言う。
「協力しあう余地は十分にあるが、問題はそういうムードが出来ているかどうかだ。われわれはもっと寛容な態度を取らなくては」