悪者にされた金持ちたちの大逆襲!
経済危機で階級対立が激化するなか、庶民に味方するメディアの贅沢バッシングに耐えかねた超富裕層が抗議の声を張り上げ始めた
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四面楚歌 金持ちというだけで詐欺師扱い、ウォール街でボーナスをもらえば泥棒扱い Jetta Productions/Getty Images
ここのところメディアをにぎわし始めた「階級戦争」で、超富裕層を主な読者層とする月刊誌ロブ・リポートが猛反撃を開始した。ブレット・アンダーセン編集長は6月号に「贅沢の意味を考える」と題したエッセーを書き、「マスメディア」が「富裕層と彼らに奉仕する産業を悪魔に仕立て上げている」と非難した。
ロブ・リポートの読者層と広告主に対する敵意は「最近のメディア現象になっており、落胆を禁じ得ない」と、アンダーセンは書く。彼に言わせれば、大衆の人気を取ろうとするポピュリズムは、「ラグジュアリー産業が、経済ばかりでなく知的にも技術的にも文化的にも社会を豊かにしてきた事実を見過ごしている」。
これは反撃の第2弾。5月号でもアンダーセンは、富裕層に対するメディアの「悪意に満ちた偏見」について書いている。
経済危機は、階級対立を表面化させている。新聞と大衆誌は1年以上前から、所得上位1%のアメリカ人に不況がどんな社会的、心理的影響を与えてきたかを事細かに報じてきた。
次にやって来たのは、禁欲時代の到来を告げる見出しの津波だ。
「贅沢の嘆き──虚栄は終わった」(ウィメンズ・ウエア・デイリー紙)、「階級の解散──最先端の富裕層を襲うステータス喪失不安」(アトランティック誌)、「不況でも買わずにいられない──匿名ラグジュアリー・ショッパーの真実」(ニューヨーク・タイムズ紙)......。同時に、大恐慌来のポピュリズムも一大政治勢力として台頭してきた。
アンダーセンは本誌の取材に対し「贅沢バッシング」を嘆いた。「多くのニュースメディアの報道はバランスを欠いている」と、アンダーセンは言う。「富裕層すべてが、650億ドルのねずみ講詐欺で捕まったバーナード・マドフと一緒くたにされ、ウォール街でボーナスを受け取る者は誰でも不正をしていると思われる」
自家用ジェット機は悪の権化
ロブ・リポートの6月号は、世界の超高級ブランドの経営トップたちの短いエッセーも載せている。「われわれが扱う業界の人々が意見を表明できる場を提供しようと思った」と、アンダーセンは言う。「そして読者にも、彼らが買ったり旅行したりすることが経済の支えになることを理解してほしかった」
寄稿した経営者のなかには、マスメディアのことを富裕な生き方の意味さえ分かっていない粗野な存在だと思っている人もいる。「ニューヨーク・タイムズは、景気後退期にスターバックスのコーヒーを買うことが贅沢だと思っている」と、英高級宝飾店グラフのアメリカ支社のCEO(最高経営責任者)、アンリ・バルギルジアンは書く。
彼は、宝飾専門店3万店の年商は250億ドルにのぼると、その経済効果を強調する。「個人消費や法人税収のなかでもかなりの比率を占めるし、雇用に貢献していることは言うまでもない」
一方、最高級シャンパンメーカー、クリュッグのマルガレート・エンリケスCEOは、贅沢の優れた長所を絶賛する。「ラグジュアリー業界は、世界の前途を照らしてきた」と彼女は言う。高級な商品やサービスは「新しいアイデアや方向性」を生み出し、自力で革新を起こしたり業界の新基準を打ち立てる資力がない企業をも潤してきたのだという。