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「iタブレット」が活字メディアを変える?
噂の新製品は、文章や写真とビデオや音楽の垣根を破る新メディアを生み出すかもしれない
アップルはペンや指を使って入力できる薄型コンピューター、タブレット型PCの開発を進めているとみられている。まだ存在もしないうちから、この「新製品」は既存の商品より盛んに批評されている。広まっている噂によると、この「iタブレット」(私が勝手に命名した)は来年1月に発表され、6月に発売されるという。
07年に「iPhone」が発売されたときと同じように、ここ数カ月間はブログでiタブレットをめぐる数々の憶測が流れ、デザインの予想図が出回り、搭載される機能が議論された。アップルからコンテンツの開発を打診されたというソフトウエア制作会社からのリーク情報も掲載された。
しかしiタブレットは実際に、こうした前評判を裏切らない衝撃をもたらすかもしれない。この商品自体が持つ威力ではなく、タブレットPCが情報伝達の方法を一変させるかもしれないからだ。
バニティ・フェア誌などの編集長を歴任し、現在はニュースサイト「デーリー・ビースト」を運営するティナ・ブラウンいわく、私たちは「ジャーナリズムの黄金時代」を迎えようとしている。私も同感だし、タブレットPCがその変化を加速させると考えている。
ネットメディアの第2章
タブレットPCは動画や音楽を流したり、文章を表示することができる。操作は指で画面を触るだけ。一番重要なのは、インターネットに常時接続できることだ。iPhone利用者は体験済みだが、常時接続は極めて大きな変化をもたらす。ネットはもはや「行き先」でも「接続先」でもない。空気のような存在になりつつある。
タブレットPCは画面が大きく、複数のウインドーを表示できる。反応は速く、バッテリー駆動時間は長い。画面上で新聞を開き、記事の横に動画を表示したり、必要な情報だけ見られるようカスタマイズできる。さらにテレビやオーディオ機器、電話としても使える。
コンテンツを作る私のような人間にとって、こうした変化は素晴らしいものだが、同時に恐ろしくもある。情報伝達の強力なツールが出てくることは素晴らしいが、一方で旧来型の情報伝達の方法にこだわっていると淘汰される。
かつてメディアは業界ごとに分かれ、「活字の人々」と「映像の人々」は違う表現方法を持っていた。だが今は、その区分けが崩れつつある。人生の大半を英語で過ごしてきた人が、他の言語やそこから派生した新言語を学ばざるを得なくなったようなものだ。
ネットメディア時代第2章の始まりだ。第1章では、ネット上でも昔と同じことをやっていた。新聞や雑誌から記事を選んで、サイトに載せる。書籍をキンドルのようなブックリーダーで発刊する。テレビ番組や映画を動画投稿ウェブサイトYouTubeで流す。
新しい手法は新世代から
新メディアが登場した当初は、こうしたことが起きるものだ。初期のテレビは、コメディアンのミルトン・バールのようなラジオ界のスターをバラエティー番組に起用した。いわば動画付きラジオだ。
だが、やがてデービッド・チェース(『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』の脚本)やラリー・デービッド(『となりのサインフェルド』の初代プロデューサー)といった製作者が登場し、テレビならではの世界観や新しい表現の形を生み出した。興味深いことに、こうした新世代の製作者はいずれもテレビ放送が始まった1940年代に生まれている。