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【15】日本と中国は米国債を買い続けるしかない。
米国債とはアメリカ政府の借金証書。その借金が、経済危機対応の景気刺激策と金融安定化策のため08年の4450億ドルから09年は1兆7500億ドルに拡大している。米国債のざっと半分を保有する外国政府など国外の投資家が不安を感じて逃げ出せば、アメリカの財政は破綻しかねない。
米国債は従来、世界で最も安全な投資先だった。アメリカは経済・軍事大国である上、世界のどこでも通用するドルを自ら印刷する基軸通貨国で、元本や利息が踏み倒されるリスクはゼロに近い。年間予算に近い総額3兆謖を外国政府に買ってもらい、財政赤字を埋められるのもそのためだ。
08年末の時点で世界最大約2兆ドルの外貨準備を持つ中国は、米国債保有高でも7396億ドルで世界一(日本は6348億ドルで2位)。中国は順調に買い増していくとみられていたが、そのペースが金融危機後、大きく鈍っている。日本の保有額も横ばいだ。
両国が買い渋り始めたのは、財政赤字の拡大やFRB(連邦準備理事会)のドル大量供給によるインフレ懸念などでドル下落のリスクが高まっているため。ドルが下がれば、中国や日本が持つ米国債の価値も下落する。中国の温家宝(ウエン・チアパオ)首相は3月13日、米国債に関して「資産の安全性をやや心配している」と発言した。
ヒラリー・クリントン米国務長官は2月の訪中の際、中国政府に国債購入への期待を伝えた。中国と日本の経済はまだ外需頼みで、輸出先1位は共にアメリカ。大量の米国債を売り払って関係が悪化すれば輸出に響くし、買わないと暴落を招きかねない。「おねだり」はむげに断れないだろう。
[2009年4月15日号掲載]