コラム

「パレスチナ問題」は、再び忘れ去られてしまうのか?... 2025年は中東和平の分水嶺になる

2024年12月23日(月)17時50分
パレスチナを支持するデモ

2024年4月16日 パレスチナを支持するデモ(ポルトガル・リスボン)撮影:曽我太一

<2023年10月7日で思考が停止したイスラエル人。イスラエルを止められない国際社会に深く失望するパレスチナ人。かつてパレスチナ問題は「中東和平」の核心であった...>

2024年、中東は揺れ動いた。イスマイル・ハニヤとヤヒヤ・シンワールというイスラム組織ハマスを代表する2人の指導者が殺害され、レバノンのシーア派組織ヒズボラの最高指導者ハッサン・ナスララ師もイスラエルによって排除された。

イランが史上初めてイスラエルへの直接攻撃に乗り出し、イスラエルも報復で応じた。緊張と緊迫が続くなか、この混乱に不意を突く形で、シリアでは反政府勢力がアサド政権をあっけなく崩壊させた。


バイデン政権は少数派の権利尊重や人道支援の受け入れなどの条件を守れば、アサド政権を倒した反政府勢力の中心的存在であるシャーム解放機構(HTS)による新政府を支持する意向を示している。HTSのリーダーは旧アルカイダ系の組織出身だが、現在は同組織とたもとを分かち、穏健化をアピールしている。

一方、混乱に拍車をかけかねないのがイスラエルだ。アサド政権が崩壊したとみるや、シリアとの間にある非武装地帯やシリア領内に侵攻し占拠。シリア国内の軍事拠点を空爆し、戦闘機などを無力化した。

戦力を無力化しておけば、新政権が今後どう転んでも脅威を最小化できるというイスラエルの身勝手な考えによるものだ。この思考の背景には自国に牙が向けられるかもしれないという「不安」がある。この根源にあるのがパレスチナ問題だ。

2023年10月以降、ガザ地区で4万5000人を超える犠牲者が出ると、国際社会は突然思い出したかのように、パレスチナ問題の解決を訴えた。アイルランドやスペイン等がパレスチナ国家の承認に踏み切り、また大国のイギリスやフランスも承認に前向きとされる。

プロフィール

曽我太一

ジャーナリスト。東京外国語大学大学院修了後、NHK入局。札幌放送局などを経て、報道局国際部で移民・難民政策、欧州情勢などを担当し、2020年からエルサレム支局長として和平問題やテック業界を取材。ロシア・ウクライナ戦争では現地入りした。2023年末よりフリーランスに。エルサレム在住。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

インド「世界最大の宗教行事」で群衆事故、7人以上死

ワールド

ゼレンスキー氏、トランプ氏に支持訴え 「プーチンは

ワールド

米政権、連邦政府職員200万人に退職勧奨 奨励金提

ワールド

ダフィー米新運輸長官、バイデン前政権下の燃費基準撤
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? 専門家たちの見解
  • 3
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 4
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 5
    AI相場に突風、中国「ディープシーク」の実力は?...…
  • 6
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 7
    トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当…
  • 8
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    天井にいた巨大グモを放っておいた結果...女性が遭遇…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ…
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 8
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 9
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 10
    いま金の価格が上がり続ける不思議
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 6
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 7
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story