コラム

「習近平版文化大革命」の発動が宣言された――と信じるべきこれだけの理由

2021年08月31日(火)18時12分

習版の「司令部を砲撃せよ」なのか?

文章によれば、革命は今、経済・文化・政治の各領域に全面的に展開されようとしているが、革命の主題はすなわち「回帰」、「資本集団からの人民群衆への回帰、資本中心から人民中心への回帰、共産党の初心への回帰、社会主義の本質への回帰」であるという。

しかし中国現代史を知る者であれば、ここで言う「回帰」はまさに、改革開放の鄧小平路線に対する否定と批判を前提としていることがすぐに分かる。つまりこの文章からすれば、鄧小平時代以来の改革開放は要するに資本集団のためのもので、共産党の「初心」と社会主義の「本質」から離反している。だからこそ今、革命を起こして路線修正を行い、人民中心や共産党初心、そして社会主義の本質への回帰を果たさなければならない、というのである。

思えば、毛沢東の発動した文化大革命は、まさに建国以来の「劉少奇を代表とする反革命的修正主義路線」を全面的に否定・批判した上で、文化・経済・政治などのあらゆる領域において「毛主席の革命路線」を取り戻し、共産主義革命の原点と初心に戻ることを旗印として掲げていた。前述の文章は紛れもなく、毛沢東流の文化大革命を強く意識した、「新版文化大革命宣言」と思うしかない。

習近平は、第2の毛沢東となって中国を震撼させる第2の文化大革命を発動するつもりなのか。今後の展開から目を離せない。

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プロフィール

石平

(せき・へい)
評論家。1962年、中国・四川省生まれ。北京大学哲学科卒。88年に留学のため来日後、天安門事件が発生。神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。07年末に日本国籍取得。『なぜ中国から離れると日本はうまくいくのか』(PHP新書)で第23回山本七平賞受賞。主に中国政治・経済や日本外交について論じている。

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