香港対応に見る習近平政権のだらしなさ
以上、香港の抗議運動が発生して以来の習政権の対応とも言えぬような対応を整理してみたが、そこから一体何を見えてくるのか。
それは、習政権の無定見さと驚くほどの機能不全だ。
香港の民意に対する無知と鈍感から、あるいは自らの力に対する過信から、習政権は抗議運動の初期段階でまず判断をミスした。香港市民の要求を頭から無視しただけでなく、改正案撤回という香港政府の提案まで拒否した。これで事態の拡大と深刻化を招くことになった。
その一方で、和解のチャンスを自ら潰しておきながら、強気のはずの習政権には力ずくで事態を収拾する覚悟もなければ具体策もない。ただ、無定見のまま右往左往して事態の悪化を座視した。そして林鄭長官が捨て身の「クーデター」に打って出ると今度はダンマリを決め込み、香港のことを忘れたかのように建国70周年のお祝い事に没頭し始めた。
ここまで来れば、習政権はもはや14億人の大国を束ねる政権の体をなしていない、と言わざるを得ない。それところか、無定見・無策・無能の「三無」がこの政権の最大の特徴になっている。
習近平主席に関して言えば、6月に抗議運動が始まってから今日に至るまで、この中国の抱える大問題について公式に発言したことは一度もない。中央政府の明確な方針はもちろん、最前線で戦っている香港政府や林鄭長官に対する激励や評価の言葉もない。
「台湾併合」への避けられない影響
最高指導者がこの頼りなさだから、政権の「三無」は無理もない。その原因については近く本コラムで再考したいが、ここでは最後に台湾問題との関連から一言付け加えたい。
おそらく台湾の民進党政権は今、香港危機の拡大と習政権の一連の対応をみて胸を撫で下ろしているのではないか。
習自身は今年1月、台湾に対して一国二制度を持ちかけ、「祖国統一=台湾併合」の戦略を進めようとした。しかし、香港がこうなっている以上、一国二制度による台湾併合がますます難しくなってきていることは明々白々である。
習はまた人民解放軍に「軍事闘争の準備」を指示して武力による台湾の併合も辞さない姿勢を示しているが、今の台湾人はそんなものはただの虚勢と恫喝だと見ているだろう。香港問題すら武力で片付けることのできない習が台湾への軍事攻撃に踏み切れるはずもないと、誰もが思うところだ。
そういう意味で、習政権の現状は香港や台湾、アジアにとってはむしろ「ありがたい」存在であるかもしれない。筆者自身も今は習政権の安定化と長期化を願いたくなる気分である。
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