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組織心理学の若き権威、アダム・グラントに聞く「成功」の知恵
グラント 人々が考え方を変えられるような文化を構築するためには、まず心理的安全性について考える必要があるだろう。エイミー・エドモンドソン(ハーバード・ビジネススクール教授)が定義しているように、心理的安全性とは文化において、あるいはチームや会社、学校、家族において、リスクを冒して率直に発言しても罰せられないと思えることだ。
何かしら反発や報復を心配せずに、率直な意見を言える。これは、権力格差が大きい文化では特に厄介だ。そのような文化では、他人に異議を唱えないものとされている。
従って、問題に最も近いところにいる人、何が問題なのかが最もよく見えている人が、権威に異を唱えるには最も難しい立場にいる。この問題に対処するためにリーダーができることの1つは、またしても日本文化に親しんでいる人にとっては比較的実践しやすい。
その方法とは、謙虚な姿勢を見せることだ。アメリカの人たちは自分に酔いやすく、自分がいかに大きな成果を上げているか、いかにほかの人たちより優れているかをアピールしたがる。
それに対し、私が日本社会の規範に接したり、日本に関するデータを見たりした限りでは、日本では、肥大した自尊心をあらわにすることは受け入れ難い態度と見なされる。もっと言えば、恥ずべき悪行のように思われる場合もある。忘れてはならないのは、謙虚さを表現するために細心の注意を払うこと。
ただし、リーダーや親としてあなたが取るべき最も重要な行動は、「いつでも言いたいを言いに来てくれよ!」と部下に述べることではないし、「異論があるなら言ってほしい」とわが子に言うことでもない。あなたがこうした言葉を述べても、部下や子供は、あなたが本心からそう言っているという確信を抱けないからだ。
上司や親の気に障ることを言ってしっぺ返しを食ったり、忙しくしていて話を聞いてもらえなかったりするのではないかと心配せずにいられない。そこで、リーダーが自分の欠点や弱みを語ることにより謙虚さを表現する必要がある。
「いま私はこれらの問題を克服しようと努めています」「最近、こうしたフィードバックを受けました。これらの点でもっと成長しなくてはならないと思っています」などと言えばいいだろう。
私がさまざまな国で実施した研究によると、リーダーがこうしたことを語れば、単にフィードバックを求めているというだけでなく、厳しい指摘を受け入れる意思があることが相手に伝わる。そのような指摘をした人物につらく当たったりはせず、それどころか真実を教えてくれたことに感謝して恩恵を施す可能性すらあると分かってもらえるのだ。
このような心理的安全性をつくり出したいのであれば、自分が謙虚にフィードバックを受け入れられる人間であること、問題の指摘に耳を傾け、問題を修正する能力があることを表現する努力が必要とされる。
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