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トランスジェンダーは男女どちらで参加すべき? 性別と五輪をめぐる建前と本音
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ハバードは東京五輪で「記録なし」に終わった EDGARD GARRIDOーREUTERS
<生まれた時の性別か現在の性別か。アメリカの世論も悩む難題を考える上で大切なこと>
8月8日に閉幕した東京五輪では、いくつかの明白な、議論の余地のない結果が出た。
例えばアメリカは今回もメダル獲得数世界一の座を守り、インドは期待を裏切る成績に終わり、開催国の日本は金メダル獲得数3位という驚異的成功を収めた。
一方、大いに議論の余地がある出来事もあった。男性として生まれ、その後性別を変更したニュージーランドの重量挙げ選手ローレル・ハバードは、女性として五輪に参加すべきだったのか。
トランスジェンダーの選手が女性として五輪に参加することは許されるのか。私は政治学者の1人として、日頃から膨大な時間をかけて世論調査を追い掛けているが、トランスジェンダー選手に対するアメリカの世論は見事にばらばらだ。
20%のアメリカ人は、トランスジェンダーの選手は現在の性別で参加すべきと考えている。39%は生まれたときの性別で参加すべきと答えた。14%はそもそも五輪に参加すべきではないと主張し、23%はどう考えるべきなのか分からず困惑している。
全体的には、人々の見方がハバードの参加を認めたIOC(国際オリンピック委員会)のルールに沿った方向に進んでいることは間違いない。IOCは勇気ある組織でも世論を主導する存在でもないが、社会の変化を反映した決定を下す傾向がある。東京五輪では142人の選手がLGBTなどの性的少数者であることを公表した。この数字は過去の全夏季大会の合計より多い。
さて、この問題についてどう考えるのが正しいのか。東京五輪は、ジェンダーとスポーツの難しい関係を浮き彫りにする具体的事例だった。
個人的にも、自分の心の奥にある偽善を突き付けられる経験をした。筆者の心に最初に浮かんだのは、テストステロンの値を重視するIOCのルールに合わせればいいという考えだった。性別を変更した選手が生物学的に女性なら、女性として競技に参加してもいいのではないか、と。
だが、競技のパフォーマンスはテストステロン値だけでは決まらない。陸上のウサイン・ボルトや水泳のマイケル・フェルプスは、それぞれの競技で最もテストステロン値が高かったと言い切れるだろうか。
ハバードは35歳まで男性だった。1990年代末には男子ジュニアの国内記録を樹立している。もし以前にハバードが男性としてメダルを掲げる映像を見ていたら、筆者は女性としての五輪参加を受け入れただろうか。もしハバードが金メダルを獲得していたら、考えを変えていたかもしれない。
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