コラム

2020米大統領選でトランプに挑むのは誰か──最初の民主党討論会から占う

2019年07月10日(水)16時40分

乱戦を制すのは誰?(民主党陣営の第1回討論会に挑んだ面々) MIKE SEGARーREUTERS

<大本命が失速し、カマラ・ハリスが急浮上――でも意外なダークホースの名は......>

手っ取り早くアメリカ政治の風を読みたければ、まずは賭け率に注目するのがいい。自腹を切って賭ける人は、党派的な好き嫌いを捨てて勝ち馬に乗ろうとするものだから。

そして野党・民主党陣営から大統領選に名乗りを上げた候補者たちの第1回討論会が終わった段階で、トップに立ったのはカマラ・ハリス上院議員。主要メディアも同様な評価を下しているが、現時点で彼女に賭ける人は大本命のジョー・バイデン前副大統領よりずっと多い。

先は長いし、風向きはいつ変わるか分からない。それでも私にはマスコミのレーダーに映らない情報がある。親愛なる読者だけに、内緒でお教えしよう。

まずは元サンアントニオ(テキサス州)市長で元住宅都市開発長官フリアン・カストロの巻き返し。今回の討論会でも有力候補のエリザベス・ウォーレン上院議員と互角の評価を得た。今後の討論会で滑らなければ4強(バイデンとバーニー・サンダース上院議員、ウォーレン、そしてハリス)に割って入る可能性大。最悪の場合でも副大統領候補の座を狙える位置にある。

逆に評価を下げたのは同じテキサス州のベト・オローク前下院議員。昨年の上院選で共和党の有力者テッド・クルーズを追い詰めて注目され、オバマ前大統領に出馬を勧められたという説もあるが、討論会では冴えず、中身もなかった。これでは副大統領候補にも残れないだろう。

それから、テレビ討論の会場に生の「聴衆」がいるというのは考えものだ。彼らの盛大な拍手や喝采は視聴者に(不当に)大きな影響を与える。そして議論の中身よりも、拍手の大きいほうが勝ったような印象を与えてしまう。今回のように候補者が多く、選択が難しい場合は特にそうだ。

言わせてもらえば、万が一にもヒラリー・クリントンが予備選に出馬すれば最終的に勝つと私は思うし、第2のドナルド・トランプになると思う。

消耗戦では若手が有利

16年大統領選のトランプは、多数の候補が乱立して党幹部が指導力を発揮できない隙を突いて、アンチ既成勢力の有権者を結集して勝利を手にした。今度の民主党予備選で、クリントンがそれを再現するのは難しくない。もちろん本人は出馬を絶対的に否定しているが、今のようなだんごレースが続けば、遅ればせながら彼女が参戦して勝利をさらうシナリオもあり得る。

08年の予備選で、クリントンはオバマと対決した討論会の過半数で勝っている。16年にはサンダースとの討論会で3戦全勝だった。今回の初戦を制したハリスも、討論のスキルでは(少なくとも今のところ)クリントンには及ばない。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

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