コラム

米大統領選を左右するかもしれない「ハリスの大笑い」

2024年09月18日(水)14時40分

ここに到るまでには、ハリス氏自身が一貫して胸を張ってきたことも効果があったと思います。「自分の笑顔は母親譲り」だとして、インドからアメリカに渡り、癌の研究者として研究に打ち込みながら自分と妹を育てた母への思いとともに、「笑顔は自分のトレードマーク」だと胸を張ってきた、その姿勢が若者たちの心を捉えたのだと思います。

ハリス氏の笑顔というのは、9月10日のトランプ氏とのテレビ討論でも効果を発揮しました。この日の討論では、二転三転した挙げ句「発言の番にある側しかマイクをオンにしない」という協定が結ばれていました。ハリス陣営はこれに対して、マイクがオフでも表情などのボディランゲージで対抗できると判断したのか、トランプ氏が非常識な暴言を繰り出す際には、「大笑い」の表情で対応し、成功していたと思います。

もちろん、この「笑顔作戦」には両刃の剣という面があります。ハリス陣営が何か失敗をするとか、あるいは株価の暴落や軍事外交におけるクライシスなどが発生して、現職副大統領として大きな批判にさらされる局面があれば、「大笑い」の動画は改めてマイナスイメージに振れる可能性はあります。そう考えると、彼女の「笑い顔」のイメージが「プラス」のままで投票日を迎えることができるかどうか、これは大きな勝敗のポイントになると思います。


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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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