コラム

「マフィアの温床」からMLBのスポンサーに...手軽化・巧妙化する「ネットギャンブルの闇」

2024年07月17日(水)13時44分
オンラインカジノ

スポーツ賭博、ネットギャンブルはどんどん手軽に PHOTO ILLUSTRATION BY BET NOIRE/ISTOCK

<「犯罪の温床」というイメージが強かったギャンブル業界だが、今やプロスポーツの公式スポンサーに。ギャンブル大国アメリカに蔓延る、参加者を巧みに誘い込むための仕掛け──>

「まだまだ日本人が知らない 世界のニュース50」1970年代までのアメリカのギャンブル業界は、ギャングやマフィアによる犯罪の温床というイメージが残っていた。80年代以降は、ラスベガスなどで、企業組織による合法カジノが栄えるように。ドナルド・トランプ前大統領はこの時代に頭角を現し、カジノ事業を拡大した。

95年前後のインターネットの普及は、その流れを変えた。オンラインカジノについては、2006年の規制の立法化で事実上合法化が進み、やがてギャンブルの主戦場はPCからスマホへと移った。この時期はポーカーやルーレットが主だったが、一部の州でオンラインによるスポーツ賭博が合法化されると、大きなビジネスに成長した。


やがてMLBやNBAなどプロスポーツの団体はカジノ業者を公式スポンサーとするようになり、スポーツ中継では刻々と変化する各チームの勝利可能性のデータが表示されるようになった。

カジノ業者のマーケティングも巧妙になり、例えば新規の会員は10ドル払って入会すると、1000ドル(15万8000円相当)のボーナスがもらえるなどのキャンペーンが行われている。

参加者の興味を喚起する仕掛けも豊富。試合の勝敗だけでなく、「この選手は試合終了までに本塁打を打つ?」など特定選手のプレーまで賭けの対象に設定したりする。大谷翔平の通訳だった水原一平被告が落ちたのも、こんなギャンブル大国の闇だ。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国の空母「遼寧」が日本の接続水域を初めて航行、与

ビジネス

午後3時のドルは141円半ばへ反落、FOMC控え方

ワールド

EU競争政策担当に指名のリベラ氏、巨大テックの支配

ビジネス

ヒズボラの爆発ポケベル、台湾企業「商標使用の別会社
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
2024年9月17日/2024年9月24日号(9/10発売)

ユダヤ人とは何なのか? なぜ世界に離散したのか? 優秀な人材を輩出した理由は? ユダヤを知れば世界が分かる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    北朝鮮で10代少女が逮捕、見せしめに...試聴した「禁断の韓国ドラマ」とは?
  • 2
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢な処刑」、少女が生き延びるのは極めて難しい
  • 3
    エリザベス女王とフィリップ殿下の銅像が完成...「誰だこれは」「撤去しろ」と批判殺到してしまう
  • 4
    地震の恩恵? 「地震が金塊を作っているかもしれない…
  • 5
    キャサリン妃とメーガン妃の「ケープ」対決...最も優…
  • 6
    浮橋に集ったロシア兵「多数を一蹴」の瞬間...HIMARS…
  • 7
    原作の「改変」が見事に成功したドラマ『SHOGUN 将軍…
  • 8
    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「…
  • 9
    バルト三国で、急速に強まるロシアの「侵攻」への警…
  • 10
    ロシア空軍が誇るSu-30M戦闘機、黒海上空でウクライ…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは...」と飼い主...住宅から巨大ニシキヘビ押収 驚愕のその姿とは?
  • 3
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢な処刑」、少女が生き延びるのは極めて難しい
  • 4
    キャサリン妃とメーガン妃の「ケープ」対決...最も優…
  • 5
    【クイズ】自殺率が最も高い国は?
  • 6
    北朝鮮で10代少女が逮捕、見せしめに...試聴した「禁…
  • 7
    ロシア空軍が誇るSu-30M戦闘機、黒海上空でウクライ…
  • 8
    アメリカの住宅がどんどん小さくなる謎
  • 9
    エリザベス女王とフィリップ殿下の銅像が完成...「誰…
  • 10
    キャサリン妃、化学療法終了も「まだ完全復帰はない…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 3
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 4
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 5
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 6
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 7
    ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
  • 8
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
  • 9
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは.…
  • 10
    止まらない爆発、巨大な煙...ウクライナの「すさまじ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story