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ウクライナ侵攻に対する米世論とバイデンの大統領演説

バイデンはウクライナを支援する立場を示しつつも、米軍派兵は行わないと明言した Saul Loeb/Pool/REUTERS
<ロシアの侵攻をめぐるアメリカの世論は左右、上下の軸で分かれている>
ロシアによるウクライナ侵攻のニュースは、連日アメリカのメディアで最大限の扱いが続いています。CNNなどニュース専門局だけでなく、3大ネットワークも「メインキャスター」クラスが西部リビウを拠点にレポートする一方で、戦争報道のノウハウを持った記者は、首都キエフから緊迫したレポートを送る態勢が取られています。
例えばですが、CNNのエリン・バーネット(その後、21時間かけて越境して帰国)、アンダーソン・クーパー、私が著書を翻訳して紹介しているNBCのリチャード・エンゲルなど、アメリカのテレビジャーナリズムにおけるビッグネームたちが、ウクライナから直接レポートしているわけで、これは説得力があります。
こうしたことに加えて、民兵自身、避難民自身が英語で語るコメントがどんどん流れることが、ダイレクトにアメリカの世論を動かしています。地下室で必死になって火炎瓶を作る女性たち、国境まで妻子を車で送って、そこで首都防衛のために戻る夫との涙の別れのシーンなども、子供を含めた当事者が泣きながら話す英語のコメントがつくことで、アメリカの視聴者は半端でない感情移入をさせられているのです。
では、ウクライナ情勢をめぐるアメリカの世論はどうなっているのかというと、これは決して一枚岩ではありません。上下、左右という2つの軸によって違いがあるからです。
中道派はウクライナ支持
まず左右の軸ですが、真ん中にある「オバマ、ヒラリー、バイデンの民主党」や「ブッシュ、マケインの共和党」を支持する人々は、ウクライナに強く同情し、ロシアを敵視するという感覚を明確にしています。
一方で、右のグループ、特に共和党内のトランプ派と言われる人々は、「トランプが大統領なら今回の戦争は起きなかった」と今でも信じており、戦争の対立構図に対して冷ややかです。確かにトランプはNATOの結束を崩しにかかり、またシリアではアサド体制の温存を含めてプーチンの専横を認めたのですから、プーチンによる西側への警戒心は減っていたと考えられます。
現時点で考えると、プーチンの世界戦略に利用されていたとしか思えませんが、トランプ派は今でも「アメリカは関わりたくない」ので「あれで良かった」という見解を捨てていません。ただ、トランプ派というのは理屈よりも情念を求心力にしていますから、この見解に加えてアフガン撤兵の失敗を例に出して「バイデンのような弱いリーダーでダメだ」という非難も混ぜているのです。
では、サンダース、オカシオコルテスといった民主党左派の立場はどうかというと、左派的な反戦の姿勢をここでも徹底しようとしており、「戦争に追い込んだバイデン外交には疑問」という姿勢を取っています。つまり、左右の軸ということでは、一番左と一番右がそれぞれのイデオロギーから「反戦」あるいは「非介入」という立場であり、真ん中の多数派については民主党も共和党もウクライナ支持で固まっているという構図です。
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