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米渡航中止勧告で崩壊した東京五輪の理念
東京五輪のロゴマークを警護する警察官 Issei Kato-REUTERS
<外国選手団と主催都市の住民が「お互いを危険な存在」と感じていては、五輪憲章の根本の理念は成立し得ない>
米国務省(日本の外務省に相当)は5月24日(月)、日本を「レベル4(渡航中止)」の対象国に指定しました。この指定ですが、言葉としては「強い表現」であるものの、具体的な規制ではなく、これで日米間の航空路線が停止するわけではありません。
また、渡航中止というのはあくまで「不要不急」の旅行を止めよという意味であって、米政府が言明しているように「五輪への参加」という「必要な目的を持った渡航」については禁止されません。
今回の渡航中止を受けて、ホワイトハウスのサキ報道官は、5月25日(火)の定例会見で、この夏の開催においては、「選手たちは厳しいコロナ対策という『オリンピックの傘』のもとで移動させるという交渉」を日本と行っているとした上で、関係者全員を守るために「特別な入国方法と、日本国内での厳格な規則」に従うと表明しました。つまり、今回の五輪は、厳しいルールに基づいて実施される見通しであり、そのルールを守った開催には協力するというのです。
確かに、日本国内では五輪開催時に来日する選手団や役員などを、できるだけ隔離する方向で議論が進んでいます。実務的には難しいと思いますが、宿泊先と練習会場と、試合の会場以外には立ち寄らせず、一般の東京都民とは接触させないという考え方で、人の動かし方を詰めているところだと思います。『オリンピックの傘』というのはそういう意味です。
五輪開催の深刻な矛盾
ですが、今回の「渡航中止」というのは、図らずも東京五輪を2021年7月に実施する際の「深刻な矛盾」を明らかにしたとも言えます。
米国国務省がCDC(疾病対策センター)と共同で、日本を「レベル4」にした理由ですが、五輪の独占中継権を持っているNBCのトム・カステロ記者は、25日夕刻の「ナイトリー・ニュース」で、日本への渡航中止の背景には「変異株の流行と、絶望的に低いワクチン接種率」があるとしていました。
つまり、アメリカ(そして他の参加国)から見れば、日本は変異株を含む新型コロナウイルスの感染が拡大する一方で、ワクチン接種が深刻なまでに遅れている「危険ゾーン」だという見方をしているわけです。
一方で、開催都市である東京都民の間には、依然として五輪開催によって大人数の選手・役員・関係者が国外から入国するのは、ウイルスが持ち込まれるから反対という心理が残っています。
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