コラム

気象庁ホームページへの広告枠、その違和感の数々

2020年08月25日(火)16時20分

もしかすると、そのような問題については破格の条件で「回避する」という条件でのオファーが来ているのかもしれません。そんなにもうからなくてもいいので、とにかく官公庁のHPに広告を押し込んでいく突破口として、ウェブ広告の代理店サイドは考えているのかもしれません。

そこに問題があります。日本の官公庁というのは、職員の一挙手一投足から、建物や備品のサイズまで細かく法律で決めるのが好きです。効率とか効果といったものよりも、形式的な遵法性が優先されることが多くあります。それにもかかわらず、今回の気象庁HPの広告掲載はどうしてサクサク進めることができるのでしょうか?

それはデジタルな世界に関しては法整備が十分にされていないからです。法整備がされていないので、柔軟に裁量して判断ができるということのようです。その上で、これが前例になれば、今度は他の官庁のHPに、そしてさらには地方公共団体にも波及することにもなりかねません。もちろん、法律による過度の規制はいちじるしい非効率や改革の遅れを招きますが、法律で規定されていないなかでここまで大きな問題が裁量で決められるのには違和感を覚えます。会計検査院などはどう考えているのでしょうか?

こうした点に加えて、今回の騒動で明らかになったのは、国民の生命財産を守るうえで非常に重要な危機管理を担当しているにも関わらず、気象庁の組織としての影響力も、与えられた予算も極めて限られているということです。

ちなみに、アメリカの気象行政を司るNOAA(海洋大気庁)の年間予算は約45億ドル(トランプが前年比で1億ドルカットした結果)つまり約4800億円あります。これに対して、日本の気象庁の年間予算594億円というのは、人口がアメリカの3分の1あり、しかも厳しい気象災害と戦っていることを考慮すれば、やはり見劣りするように思います。もちろん、アメリカの場合NOAAのホームページに広告は一切掲載されていません。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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