コラム

日本がコロナ死亡者を過小申告している可能性はあるのか?

2020年04月21日(火)17時30分

他国と比較して日本の死亡者数が極めて少ないことは疑念も呼んでいる Kim Kyung Hoon-REUTERS

<政府が死者数を少なく見せたいという動機は考えられるが、実際に新型コロナウイルスの死亡者を隠すのはあり得ないこと>

新型コロナウイルスによる死亡者については、日本でも少しずつ増加しており、4月20日には1日の死亡者が20人となりました。最新のNHKの数字によれば累計で248人(クルーズ船乗船者を除く)となっています。

ですが、世界的に見ればこの数字は非常に少ないと言えます。例えば私の住むアメリカのニュージャージー州では先週は毎日200人以上の死亡が報告されていましたし、ニューヨーク州に至っては1日あたり600~700人というペースでした。

アメリカのジョンズ・ホプキンズ大学が公開しているコロナ関連のポータルによれば、死亡者数の累計と同時に人口10万人あたりの死亡者数が確認できます。その最新の数字は以下のようになっています。

▼ベルギー 死亡者5683人(人口10万人あたり49.75人)
▼スペイン 死亡者2万453人(人口10万人あたり43.77人)
▼イタリア 死亡者2万3660人(人口10万人あたり39.15人)
▼フランス 死亡者1万9744人(人口10万人あたり29.47人)
▼イギリス 死亡者1万6095人(人口10万人あたり24.21人)
▼アメリカ 死亡者4万661人(人口10万人あたり12.43人)
▼日本   死亡者236人(人口10万人あたり0.19人)

この数字ですが、今後悪化していく可能性がないわけではありません。ただ、感染の当初よりWHOという場で各国の専門家が議論してきたように、拡大を遅らせることは、それだけ時間の余裕ができて医療現場での対策が可能となります。ですから日本の場合に「遅らせる」ことができたというのは、それだけで評価できると思います。

また、仮に今後の感染拡大が心配されるにしても、現時点での死者数が少ないということは、そこから逆算しての重症者数も感染者数も、欧米と比較すると限定的な数字にとどまっているということは言えます。

であるならば、現在心配されている市中感染の拡大ということも、日本としては3月中旬以前と比較して危険なレベルではあっても、欧米と比較すると2桁以上低いということになります。と言うことは、ピークの抑え込みや、中国(湖北省以外)のように、早期にほぼ完全な収束というのも可能になってきます。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米情報機関「中国は最大の脅威」、AIで米凌駕 台湾

ビジネス

NY外為市場=ドル/円軟調、関税導入巡る不透明感で

ビジネス

米国、輸出制限リストに70団体を追加 中国・イラン

ビジネス

米国株式市場=続伸、米関税巡る柔軟姿勢に期待 経済
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取締役会はマスクCEOを辞めさせろ」
  • 4
    「トランプが変えた世界」を30年前に描いていた...あ…
  • 5
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 6
    トランプ批判で入国拒否も?...米空港で広がる「スマ…
  • 7
    「悪循環」中国の飲食店に大倒産時代が到来...デフレ…
  • 8
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 9
    老化を遅らせる食事法...細胞を大掃除する「断続的フ…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story